高度デザイン人材とは?【身につけるべき能力や職種まで解説!】
こんにちはデザインメンターのたかりょーです。
デザイン経営を推進していく上では、高度デザイン人材は不可欠です。
今回のブログではどういった人材なのかを説明していきますね。
なお今回のブログは、経済産業省が公表している「⾼度デザイン⼈材育成ガイドライン」を参考にして記事を書かせていただいています。
目次
「高度デザイン人材」とは?
高度デザイン人材とは、デザインを基軸として、ビジネスや社会課題を解決するために必要なデザイン力を持ち、ビジネスや社会に貢献できる人材のこと。
経済産業省は2019年3月に未来の産業や社会を発展させるための、デザイン手法を生かす考えを広く普及意図て「高度デザイン人材育成研究会」というガイドラインを公表しています。
そのガイドラインには、高度デザイン人材について以下のように示されています。
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- これからの社会に必要なデザインを基軸にして有益な変革を導く人材
- デザインのスキルと、ビジネス 、テクノロジーのスキルが結合した人材
つまり高度デザイン人材は、デザインの知識だけでなく、ビジネス経営やテクノロジーといった幅広い領域を越境する知識または経験を有している必要があり、「デザイン経営」を主導的に推進するスキルを持った人材なのです
デザイン経営と高度デザイン人材の関係性
デザイン経営とは、企業経営においてデザイン思考やデザイン手法を取り入れることで、新たな価値を創造し、イノベーション創出や競争優位性を獲得へと繋げる経営手法です。
そんなデザイン経営を実践するためには、高度デザイン人材が不可欠です。
高度デザイン人材は、デザイン思考やデザイン手法を熟知し、それをビジネスに活かすことができる人材です。彼らは企業戦略やビジネスモデルの構築、製品やサービスのデザイン・開発、マーケティング戦略の策定など、デザイン思考を用いた多岐にわたる業務に携わることができます。
デザイン経営について知りたい方へ
https://designmentor.jp/knowledgenote/design-management/
デザイン思考について知りたい方へ
https://designmentor.jp/knowledgenote/design-thinking/
高度デザイン人材が企業のなかでどのような役割を担うのか?
高度人材はデザイン経営では下記の役割を担います。
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- 顕在・潜在両方の課題を発見し、適切な解決策を提案。リーダシップを発揮して社内全体を巻き込んで課題解決に向けて行動
- デザイン思考を活用して製品やサービスの企画・開発を牽引
- マーケティング戦略の策定では、顧客視点やUX(ユーザーエクスペリエンス)を考慮した戦略を提案
- 企業文化やブランドイメージの構築に貢献
このようにデザイン経営と高度デザイン人材は切っても切れない関係性にあって、ビジネスや社会課題を解決するために必要なデザイン力を持ち、ビジネスや社会に貢献できる人材として貢献します。
どうして高度デザイン人材が必要なのか?
政府は2018年に経済産業省と特許庁が「『デザイン経営』宣言」を提言しました。その流れの中で改めて「デザイン」という価値を、単なる表層的な部分だけではなく、より経営視点の考え方として広義に捉えるようになり、今後、企業経営に大きく関わる存在=としてデザインを再定義。
それは大企業のみならず、地方の中小企業や自治体も含めて推進しています。
ただデザイン経営を推進する上で、一般的な「デザイナー」では表層的なスキルしか持っておらず、経営やビジネスというより上流の部分まで思考をできる人材が必要となってきます。
つまりビジネス✖️デザインという思考ができる人材こそ、デザイン経営を推進できる人材であって、そういった人材こそ「高度デザイン人材」なのです。
高度デザイン人材が果たす役割とは?
デザイン力によるイノベーションの創出
デザインによって、商品やサービスに付加価値を与えることができます。高度デザイン人材がビジネスにおいて、デザイン力を活かすことで、顧客ニーズに合った商品やサービスを開発し、ビジネス価値を創造することができます。
高度デザイン人材は、企業のイノベーションや変革を牽引するために必要不可欠な存在となっています。従来の枠組みにとらわれない発想力によって、商品やサービスに新たな付加価値を与える存在だからです。
これまではマーケティング的な しかし高度、
社会課題解決に向けたデザイン力の活用
ビジネスだけでなく、あらゆる社会課題を解決
デザイン力を活用することで、社会問題を解決することができます。高度デザイン人材が社会課題をデザイン思考で捉え、問題解決のアイデアを提案することで、社会貢献を果たすことができます。
ビジネスとデザインの融合による競争力の強化
ビジネスとデザインが融合した経営を行うことで、競争力の強化が期待されます。高度デザイン人材が、ビジネス視点とデザイン視点の両面からプロジェクトに取り組むことで、顧客にとって魅力的な商品やサービスを生み出し、企業の競争力を高めることができます。
また、ユーザー視点に立ったデザインシンキングの手法を駆使することで、企業の課題解決につながるイノベーションを生み出すことができます。このように高度デザイン人材は、企業の成長に大きく寄与する人材であるため、企業は積極的に高度デザイン人材の育成や採用を行う必要があります。
高度デザイン人材に必要なスキルとは?
- じゃあデザイナーはどんなスキルを身につければ高度デザイン人材になれるの?
ここでは具体的にどんなスキルが必要なのかを説明します。大きく分けて4つです。
- デザインスキル
- デザイン哲学の理解
- アート
- リーダーシップ
- ビジネススキル
デザインスキル
デザインスキルとは下記の3つです。
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UXデザインの理解と実践
UXデザイン全体をプロディースする力が必要です。具体的にはユーザー体験・価値など抽象概念をデザインすることの理解、UXデザインの反復的なプロセスを伴うプロジェクト実践
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デザインリサーチ
UXデザインのプロセスの一つですが、ユーザーリサーチを含むデザインリサーチの方法論の習得 です。例えばフィールドワークや参与観察など各種定性調査手法/分析構造化手法)
デザインリサーチはファシリテーション能力やリーダーシップ能力を発揮して主導的に推進しなけえばならず非常に専⾨性の高い能力です。また分野によっては認知科学や社会学調査の基礎的な実験を実施する必要があり、柔軟な思考と幅広い教養が求められます。
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ビジュアライゼーション
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「ビジュアライゼーション」は抽象度の高い概念やアイデア、複雑度の⾼い課題などを視覚的に表現します。
ビジュアライゼーションは、アイデアやコンセプトを視覚的に表現することができるため、デザインチーム内やクライアントとのコミュニケーションを支援し合意形成が容易になります。例えば、スケッチやダイアグラム、ワイヤーフレーム、プロトタイプなどを用いたビジュアライゼーションはコンセプトアイデアを説明し、共有するための効果的な手段です。
その他、問題を視覚的に表現することで、言語でしか表現できなかった問題の状況や関係性をわかりやすく表現できます。
デザイン哲学の理解
「デザイン哲学」とはわかりやすく言えば「デザインの考え方」と言えます。
つまりデザインにおける美学や倫理、価値観や思想、哲学的背景といったデザインの本質的な
昨今有名なデザイン思考だったり、ユーザー視点だったりもデザイン哲学といえます。
ビジネスでデザインアプローチを実施する上で、経営層やメンバーにデザイナー⾃⾝がこういったデザインの本質的な意義を説明する必要があります。
もちろん一般的なデザイン哲学だけでなく、自己の哲学を作り上げて、周囲に的確に伝え、共有することができます。
デザイン哲学への造詣を深めて、適切に説明する能力が必要とされる。
アートの感性
デザインは、ビジュアルデザインやグラフィックデザイン、インダストリアルデザインなど様々な分野がありますが、どの分野においてもデザイナーの主観がアウトプットに影響を与えます。
主観とは、デザイナー自身の美的感覚や芸術的な視点、思考思想ですね。
例えばデザインの色彩や形状、素材感に対する感性が優れていたデザイナーなら、その感性が際立つデザインが生み出されますよね。
また商品やサービスが持つコンセプトを伝える際にも、デザイナーの主観的な判断が強く反映されます。自身の持っている素質を生かした視点に基づいて“問い”を発して、クライアントの要望をどう解釈し、どのようにデザインへ具現化していくか。
それらもやはりデザイナーのアート感覚に大きく左右されます。
リーダーシップ
デザインプロジェクトにおいては、プロジェクトで掲げた課題解決ゴールに向かって、デザイナー自身が主体性をもって、チームを率いるリーダー能力が求められます。
それは例えばプロジェクトマネジメントスキルともいます。プロジェクトを進める上での計画、調整、実行、評価など、プロジェクトマネジメントに必要なスキルです。デザインにおいても、クライアントとのコミュニケーションやプロジェクトの進捗管理などが求められます。
またプロジェクトのビジョンを提示して、メンバーと積極的にコミュニケーションを取りながら、多くの人々を巻き込み、理解を促すファシリテーション力も欠かせません。
つまりリーダーシップとは、デザインリーダーとしてプロジェクトを主体的にリードしていく能力ともに、豊富な実践経験が必要なのです。
ビジネススキル
上流であればあるほど、ビジネス知識や観点を持つさまざまな⼈々とやりとりをします。
高度デザイン人材は、そういった周囲のステークホルダー(非デザイナー)に対して、デザインプロセスやデザインアプローチの内容を伝えて、理解を促す役割も担います。
そういった時に基礎的なビジネス知識から、ビジネスモデルやバリューチェン、マーケティング戦略まで多岐に渡る事業戦略を理解している必要があります。
またマーケティングなどを理解していると「そのマーケ戦略であれば、デザインはこうしたほうがいいですよ」と対等の立場で話せるようにもなります。
デザイナーに求められる=領域を越境すること!
上記を見ると、めちゃくちゃ獲得するスキルの量、多くない?と思う人もいるかもしれません。
でも実はガイドラインは有識者の方々が作った内容です。
だから「これもあれも」と全てを盛り込んでいるんだと思います。
ここで強調しておきたいのは、よりデザイナーのスキルを高めるには、今の自分の立ち位置を越境することです。
デザイナーだったら単純に綺麗な画を描けばいいんでしょう?ビジュアルさえ良ければいいんでしょ?・・・ではないんです。
それは事業という大きい視点に立てば、あくまで一要素にすぎません。
もっと組織の中で重要な人材となるためには、今のビジュアルするだけの領域を飛びし、事業戦略を踏まえたクリエーティブを担えるようなコア人材になること。
そしてビジネスに必要な素養だったり、リーダーシップを発揮しながら、ビジネスとデザインをつなぐ存在になるべきなのです。
具体的にどういったデザイナーになればいいの?
高度デザイン人材について、具体的な職種としては5つが挙げられます。
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- サービスデザイナー
- ビジネスデザイナー
- ビジョンデザイナー
- デザインストラテジスト
- デザインマネージャー
上記は組織内の具体的なデザイナー像として、ガイドラインにおいて「BTD型高度デザイン人材の5つの分類」で触れられています。
①サービスデザイナー
製品やサービスを含むすべての顧客体験を、潜在的な課題や感性を捉えつつエコシステムとの関係性を踏まえ俯瞰的かつ統合的にデザインする。
サービスデザインとは事象をデザインすること。製品やサービスを含むすべての顧客体験を統合的にデザインする幅広い業務範囲を持ちます。それはプロダクトだけではなく、サービスデザインは事象に関わるスタッフや委託業者すべての関係を想定し、視覚化するデザインが必要です。
- サービスデザイナーはシニアUXデザイナー、デザインテクノロジスト。
②ビジネスデザイナー
社会的経済的コンテキストを踏まえて、 新しいビジネスやサービスの開発を通して社会に存在する厄介な問題 ( Wicked Problem) への斬新で実現可能な解決策を示す。
ビジネスデザイナーはビジネス全体を主導的な立場でリードしていく人材です。
単なるアイデアだけではなく、それを「ビジネス」として機能させるために、仕組みを構築する役割があります。
つまり新規事業において、新しく販売チャネルを構築したり、ビジネスモデル自体を構築する人材のこと。
役割としては社内外のハブ・ファシリテーターであったり、事業企画者としての企画力・課題解決力を有する必要があります。
③ビジョンデザイナー
社会の動きから憶測される未来の姿を提示する。 人や社会のあるべき姿への問いを投げかけ社会を巻き込みながら未来の体験をプロトタイピングし、表現する。
アート感覚やデザイン哲学の視点を持ち、企業組織から社会まで、未来ビジョンを構想するデザイナー。
未来は予想不可能ですが、目の前の人間や社会を眺め続けることで、未来に訪れるであろう社会を妄想・想像。そしてストーリーやプロトタイプを通じて、未来像を提供して、課題を創造的に解決する人材です。
向かうべき方向を設計し、道導としての組織・社会を引っ張っていく存在ともなります。
④デザインストラテジスト
自社組織のリソースである人・テクノロジーなどを熟知し組織ビジョンに基づいて事業戦略、組織戦略、デザイン戦略を合致させる。
デザインを戦略的に運用しクリエイティブの視点から、事業戦略、組織戦略、デザイン戦略を具現化させていく存在です。を提案する役割を担います。
事業課題解決に向けて目標を明確化して、最終的には事業収益、成長を生み出すことも求められます。
⑤デザインマネージャー
組織におけるデザイン資源を戦略的に活用するために組織とデザイナーの関係性を設計・運用し、 日々のデザイン活動をデザイン戦略に基づいて遂行していく。
デザインのメンターとして、社内にいるデザイン人材を育てていく存在です。
人材育成を通じて、創造的にかつ主体的に動けるような組織づくりを主導的に担います。
参考文献紹介
高度デザイン人材育成ガイドライン 詳細版(PDF形式:6,718KB)PDFファイル