「メンタルアベイラビリティ」と「フィジカルアベイラビリティ」とは?【デザイナー必須概念】

  • ブランディング

デザインに携わる人であれば「メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティ」は必ず知っておいた方がいいブランディング用語です。

というのもデザイナーが経営者と話すときに

  • ブランドイメージを高めたい
  • マーケットシェアをあげたい
  • 売り上げをあげたい

こんな要望が寄せられることがあり、そういった時にメンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティと言う概念を知っていると、企業においてどこに問題があり、どういう解決策があるかを考えることができます。

メンタルアベイラビリティ (Mental Availability)とは?

メンタルアベイラビリティとは「ブランド想起のされやすさ」=「ブランドが浮かび上がる能力」です。

要は何かを購入する際に、そのブランドが想起されやすいこと。

消費者は商品検討・購入などさまざまな状況・ニーズの中で、特定のプロダクトやブランドを思い出したり、選択肢として考慮したりしますが、メンタルアベイラビリティが高いほど彼らの心にブランド・サービスが浮かんできます

例えば僕が最近ハマっているキャンプで考えた時、「寝袋を買おう」と思ったときに、最初に真っ先に思い出すのが「ロゴス」です。このように何かを購入しようと考えた時に真っ先に思い浮かぶブランドは選ばれる率が高まります。

「認知率」と「選好性(preference)」を高めよう

メンタルアベイラビリティは、「認知率の高さ」と「選好性(preference)の高さ」が重要。

ふたつが高ければ高いほど、選ばれやすいブランド・サービスになります。

認知率は広告などのマーケティングコミュニケーションによって高めていくことができます。

  • しかし選好性とは、単なる好みではなくて、実際の行動の時に、「AよりもBを好む」というブランドが「選ばれる」率を指しています。

ブランドカテゴライゼーションとは?

メンタルアベイラビリティをもっと深く理解するために、ブランドカテゴライゼーションというのも知っておいた方がいいです。

ブランドカテゴライゼーションとは、購入するブランドを絞り込む一連の流れのこと。

3つの段階があります。

知名集合 (Awareness Set):ブランド・サービス名を知っているか、知らないか

処理集合 (Consideration Set):実際にブランド・サービス名の特徴を理解しているか、していないか”

想起集合 (エボークトセット):“ブランド・サービス名を知っており、購入検討のときに選択肢として想起される”

すべてのブランドが知名集合からスタートし、処理集合、想起集合と進んでいきます。

メンタルアベイラビリティは想起集合に大きく関わっています。

想起の法則:3種類程度の物品やブランドを想起する

また想起という点で、「消費者は購買意思決定の際に、3つ程度の選択肢を思い浮かべる傾向」があるという法則を知っておくと便利です。

例えばある消費者が新しいテントを買おうと考えているとします。テントには数多くのブランドが存在しますが、どのブランドのテントを選ぶかは大体3ブランドくらいの候補に絞られていきます。

僕の場合だったら「モンベル」「スノーピーク」「コールマン」「ノースフェイス」がパッと浮かんできました。

あとは朧げに覚えているブランドもありますが、今上がってきたブランドはまず購入の選択肢に含まれます。

その分買われる率も上がりますよね。

大事なのは、この段階では、本やスマホだけに頼ることなく彼らの心で想起される、と言う点です。

メンタルアベイラビリティでは、この最初の想起されるブランドに、自分たちのブランドをどう食い込ませるか、と言うこと。

フィジカルアベイラビリティ (Physical Availability)

フィジカルアベイラビリティとは「商品やサービスが物理的に手に入りやすい状態」のことです。

つまり「買い求めやすさ」=「すぐに買えるか?・売られているかどうか?」

“物理的に入手可能か”と言う点から、購買機会の高さに直結してきます。

フィジカルアベイラビリティは実際の購買行動を支援する要因ですから、その理想は、購買機会を高くし、顧客が買いやすい状態をつくること。

要は消費者がいざ商品を買いたきときに、すぐに買う距離にその商材があるか?と言うこと。当然ながら手に入れることができる状態や可能性が高ければ高いほど、買われる確率が高まりますよね。

フィジカルアベイラビリティの要素

フィジカルアベイラビリティは、商品の在庫状況、流通チャネル、販売場所(店舗の多さ・地理的な利便性)、配送などのさまざまな要素によって形成されます。

例えば業界で言うと、飲食店・カフェ業界は販売場所が重要。なぜならどれだけ認知されている好意的に思われてあるカフェでも、行きたいときにすぐに行ける場所にお店がない限り、来店してもらうことはできませんよね。

  • あるいはメディアで有名になったスナック菓子があったとして、全国に多数あるコンビニやスーパーに在庫がなければ、買い求めやさは少ないです。つまり、売上の多寡とは「想起されやすいか」「買い求めやすいか」の相乗関係において、基本的には決する。

どの業界においても「メンタルアベイラビリティ」と「フィジカルアベイラビリティ」の強さが勝ち負けを左右する

新規顧客を獲得したい、またマーケットシェアを伸ばしたい、こうした悩みを解決する鉄則があります。

それは「思い出されやすく、かつ買いやすい状態」を作ることです。

どの業界においても必ず出てくるのが、

  • 「ブランドの認知」を高めるか
  • 「配荷率」を高める

と言う議論です。

ただそもそも消費者の意思決定プロセスにおいて、「頭の中で想起されやすい」と「実際に売られている」の2つの要因は相互に影響し合っています。

そのため

  1. ブランドが思い出されやすい状態を作り、購入時に選択肢に入る(メンタル・アベイラビリティ)
  2. 店頭やオンラインショップに商品があり購入されやすい環境を作って、すぐに買ってもらえるようにする(フィジカルアベイラビリティ)

1と2の段階を、スムーズに移行させていくことが重要なのです。

デザインでコントロールできるのはメンタルアベイラビリティ

ここまで概念を見てきましたが、デザイナーが気をつけるべき点について。

実はデザイナーあるいはマーケターができることってメンタルアベイラビリティをコントロールし、強化することなんです。

メンタル・アベイラビリティを強めるためには、フリークエンシー(=接触頻度)を獲得することが重要。つまりフリークエンシーを獲得することで想起性を高め、いざニーズが出てきた時に思い出してもらえる想起集合に入っておくことが肝要なのです。

だからこそWEBサイトやSNSの広告だけでなく、パンフレットやイベントツールなどさまざまなプロモーションが必要になってきます。

そして全てでデザインが発生します。それはビジュアルだけでななく、プロモーション全体を設計すると言う意味でも。

識別性は、ブランドの独自性を指し、差別化とは異なります。例えば、シルエットを見ただけでわかる(例:コカ・コーラの瓶の形)、体験や思い出と紐づいている(例:90年代に流行ったスニーカー)、メロディーを聞いて思い出す(例:コンビニの入店音)とか。ロゴマークも含まれますね。

 

識別性を高めること

識別性を高めるとはなんぞや?と思う人もいるかもしれません。

簡単に言えば、あるブランドを見た時に、「あっあのブランドでね」と思わせること。

それがロゴマークを見るでもいいですし、何かを体験やら思い出と紐づいているものでもいいです。

要は、他社とは違って自分の記憶やらと密着してしるもので、はっきりと区別できるということが大事です。

他の競合他社との差別化を図るために識別性が高くなければなりません。

ブランドコンセプトを中心に据えよ

では識別性を高めるためにはどうすればいいか?それはブランドコンセプトを中心に据えること。

ブランドコンセプトとは、つまり「ブランドの中心概念」です。

今後あらゆる体験はブランドコンセプトを中心に多角的に構築されていくものです。

そもそもビジュアルとはブランドコンセプトをどう視覚化させるか?の一種の手段にすぎません。

だからデザインを作る時には、中核となるブランドコンセプトから、デザインモチーフやカラーリング、フォント選定をしていくべきです。

間違っても、「美しいデザインにしよう」みたいな感覚的なスタートからはやめましょう。

ロゴマークやコーポレートカラーは統一

ブランドのデザインはさまざまな体験から得られる印象に一貫性があった方がいいです。

デザイン要素が統一されていればいるほど、ブランドに視覚的なアイデンティティが生まれてきます。

どのタッチポイントにおいても同じ見え方になれば、いざブランドを認知した時に「利用したことないけど見たことがある」と言う判断へ持っていけます。

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まえかわひろき | デザインメンター

アイムホッピング合同会社代表。グラフィック、Web、動画など多岐にわたる領域でデザイナー、クリエイティブディレクターとして経験を積んだ後に独立。デザイナー育成に力を入れている。