デザイナーこそ、マーケティングスキルを学べき話

  • デザイン

実際のデザイナーの悩み

  • クールでかっこいいデザインを作った。でもクライアントになかなか納得してもらえない。なぜだろう・・・
  • ビジュアル的に印象的なデザインに仕上がった。でも思うような成果が得られなかった。クライアントには満足してもらっていない。

こうした悩みを持つデザイナーは、マーケティングスキルをもっと身につけるべきです。

デザイナーにマーケティングスキルが必要な理由を一言で表すなら、「根拠に基づくデザイン」ができるから。

「根拠に基づくデザイン」とは主観的な判断や偶発的なアイデアに頼るだけでなく、ターゲットのニーズ・課題感や市場のトレンドといった“根拠”に基づいてデザインを行うアプローチです。

事実ベースのデザインほど強いものはない

デザインの世界において、事実ベースのアプローチほど強力なものないです。

デザインは目に見えるものですから「主観的な判断」をされがちです。つまりデザインを届ける先(ターゲット)も、ゴール(目的)も意識することもなく「私は〇〇が好きだから」というふうに、好みが色濃く反映されがちなのです。

そうなると「一見良さそうに見える」デザインも、全然ターゲットが求めている情報を提供できてない、デザインが出来上がったりします。

事実ベースというのは、「実際にあること」です。つまり、デザインを使う・見る先の人を想像できている状態で、かつ、数字などのデータを用いているので“具体性”が出てきます。

具体性があれば、その分課題に対して、どうアプローチするかが明確になり、デザインに説得力が生まれます。そうなると、例えばクライアント(意思決定者)にデザイン提案するときにも承認やリソースの確保もしやすくなります。

「カッコいいデザインにしたい」の弊害

以前僕の経験であったのが、訪問看護サービスのWebサイトを作ったとき。

訪問看護ステーションの管理者から、「他の訪問看護業者には奇抜な感じがしたい、宇宙っぽくて黒でシックな感じがいい」という依頼がありました。さらに訪問看護のサービス利用も増加させつつ、という・・・。

彼の発言は完全に「表現」について語っているようで、「あっ、この人全くターゲットが見えていないな」と思いました。

なぜなら訪問看護ステーションのWebサイトを見るターゲットは、自分のお爺さんやお婆さんを預けようと考えている「ご家族」です。ご家族の人は、そんな奇抜さは一切求めていなくて、ここの訪問看護ステーションに安心して預けれるか?という点がとても大切なニーズです。

どうしてもデザインは目に見えるからこそ、「デザインがカッコいい」というふうな要求は仕方ないです。でもカッコよさを求めるなら、そういうデザインを求める顧客層(例えば、おしゃれな家を立てたいなど)に訴求する場合に限ります。さらに「カッコよさ」というのは顧客を絞ることになります。つまりそれ以外の顧客には響かないことがあり、結果として、より広い市場への訴求が難しくなることがあります。

そうした弊害があるんだよ、ってことはちゃんと理解してもらった方がいいです。

そもそもデザインとは?

そもそもデザインとはなんんでしょうか。

よく記事では、「デザインは商品やサービスが持っている価値を、ターゲットユーザーに分かりやすく伝えるための手段」と書かれていますよね。

たしかにその通りです。しかしデザインは狭義におけるデザインの話で、先ほど話した「表現」の部分のことしか言ってません。

デザインの本質は「問題解決」です。

単に外見の美しさやスタイルにとどまらず、問題解決をするために「設計・組み立ていくこと」だと思います。

だからデザインは作る前の段階、つまりそもそも「問題を定義する=作る」こともその範囲に含まれています。だからこそ、デザインは、商品・サービスを魅せるだけでなくユーザーに届けるプロセスを全体を設計することでもあります。

マーケティングスキルを身につけるべき理由とは?

デザイナーがマーケティングのスキルを身につけるべき理由は下記の3つです。

  • 「問題」を正しく設定し目的思考で
  • 「問題解決」という結果につなげられるから
  • クライアントの好みでデザインしなくなる

問題」を正しく設定できるから

先ほども言ったように、デザインは顧客の問題を解決するための手段です。だからマーケティングスキルを身につけると、デザインプロセスをはじめる前に、“問題”をしっかりと見定めることができます。

今回のデザインでは「何が問題か」を正しく仮定しながら、デザインを作れるということです。

例えば、ある商品やサービスのランディングページ(LP)を作る際に、マーケティングへの意識があれば、下記の視点をもちながらデザインを考えることができます。

  • 市場規模・市場動向→今市場ではどのようなことが求められているか?どんな競合がいるか?
  • 企業・サービスへの理解→企業が保有する人的資源、技術、サービスのブランドイメージは?
  • 顧客視点 (消費者理解)→顧客はどんなことを求めているのか?

こうした複数の視点を持てると、デザインを作るときに、「この配色は可愛すぎるよね、だってターゲットには〇〇だから」、「市場的に求められているのは〇〇だよね」「サービスのブランド的には〇〇の方がよくない?」というふうに、〇〇の部分が“根拠”になってきます。

世の中のデザインでは顧客や市場が見えていないからこそ、「実際の問題」に目を向けられずに、表現に偏るケースがかなり多いです。

問題」に対して正しい「答え」を出せれるようになるから

正しく問題設定ができれば、デザインで「伝えるべき価値」が明確になります。要はターゲットのニーズに合わせて「伝えるべき情報」を明確にできるわけです。

例えば車検専門会社のWebサイトを作るとき。大切な視点としては、「なぜ車検の依頼先を変えようと思うか?」という視点。

そもそもターゲットが車検を依頼する先は、ディーラーや整備工場、車検専門店と複数あります。そして車検は「購入したディーラー」にそのまま依頼するケースが多いです。

だからこそ、車検専門店へ依頼するというのは、ディーラー車検を辞めた理由など「何かしら“理由”」があるはずです。そこをちゃんと意識しなければ、デザインで「伝えるべき情報=正しい提供価値」を整理できないのです。

例えば下記のように

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000153.000010893.html

・「車検の依頼先を変更した理由はなんですか?最もあてはまるものをお選びください」と質問しました。最も多かったのは、「価格が高かった(34.8%)」という理由でした。既出の質問で不安を感じる人が多かったのも、やはり価格面です。しかしながら、「スタッフの対応(15.6%)」を理由に変更する人も多く、安ければ良いというわけでもありません。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000153.000010893.html

・純正品は社外品より高額なのが一般的
・整備項目が多い、部品交換の基準が厳しいため車検費用が高い
・他社の車については整備経験、知識が豊富ではない
・車検期間が長い(最長1週間が目安)

https://park.sompo-japan.co.jp/sompoinfo/move/column/02/index.html

つまり車検専門店のWebサイトを作るならば、ターゲットに対して「価格メリット」「スタッフの柔軟な対応力」「車検のスピード感」という部分を伝えた方がいいのです。反対に「技術力」を中心として「価格を掲載しない」「スタッフの顔を見せない」サイトにすると、それは「顧客が見えていない」ことになります。

これは、正しく顧客に価値を伝えられていない状態になりますよね。

クライアントの好みでデザインしなくなる

デザインは単にクライアントの要望を満たすだけではなく、「自分が作っているものは誰のために、何のためにあるのか」という大事な質問に答えることができます。これは、デザイナーが自分の創造力を活かして、ただの指示通りに作るのではなく、もっと創造的なアプローチを取れるようになるということです。

ターゲットがはっきりしていないと、デザインはデザイナーやクライアントの好みに左右されがちで、修正の連続に陥りやすくなります。しかし、ターゲットが明確な場合、必要のない要素を取り除き、クライアントに適切な提案を行うことができます。結局のところ、マーケティングスキルは、課題をしっかりと設定し解決するために必要不可欠であり、効果的なデザイン実現の鍵なのです。

、その商品やサービスに興味を持ちそうなターゲットユーザーを特定します。

もし車検のLPを作るときには、例えば「なぜその車検会社を選んでいるか?」というニーズをまず感あげます。

そういうときにはネットにある

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Hee

地方でWebディレクター。コンセプトメイキングや情報設計を含めて上流工程から制作業務に携わっています。コーポレートサイト、ECサイト、自治体サイト、ブランドサイト、グラフィックなど他ジャンルを経験。多いときには20案件をもつことも。デザインメンターでは複数のデザイナーに対するデザインディレクションの経験、ブランディング提案の経験から学んだことを発信しています。