ブランディングとは「想い」を聞くことから【プロセスも紹介】

すべての行動の原動力が「想い」であるように、ブランドを唯一無二の存在にする力もまた「想い」にあります。この記事では、ブランディングにおける「想い」の重要性と、それを実現するプロセスについて考察します。
ディレクターやデザイナーが企業をブランディングするときには、「想い」を聞き出すことが大事。
「想い」とは何か?
まずそもそもブランドの「想い」とはなんでしょうか?
それは、いろいろな表現が可能です。
- 社会をより良くしたいという使命感
- 人々の生活に新しい価値を届けたい願望
- こんなブランドでありたいという未来に向けて実現したい理想像
「想い」が生む唯一無二の個性
同じ市場で競合していても、その根底にある「想い」が異なれば、全く違うブランドが育っていきます。例えば、同じコーヒーチェーンでも、「くつろぎの場所を作りたい」という想いと「最高品質のコーヒーを届けたい」という想いでは、店づくりからサービス、商品開発まで、すべてが違う形になっていくのです。
ブランディングは「想い」を引き出し言語化すること
僕の経験上、組織の中には、明確な言葉になっていない「想い」が数多く存在します。
それはそういった「想い」を普段から意識しておらず、整理する時間がないからだと思っています。
しかしながら「想い」はなにか日常の中に隠されていると思っています。
- 日々の業務の中で自然と培われた価値観
- 暗黙知として受け継がれてきた大切なこと
- まだ言葉になっていない期待感
ブランディングではこういった声を、経営者や幹部層、社員から引き出す作業になります。
表層的な差別化ポイントを超えた本質的な存在意義の探求 創業時の理念や歴史の中に埋もれた真の「想い」の再発見 その企業/ブランドにしかない独自の価値観の明確化
つまりディレクターやデザイナーは良い聞き手に回ることが求められるのです。
つまり「深い傾聴」から始める
ブランディングにおいて、「傾聴する」ことは非常に大切です。傾聴をする対象は大きく分けて3つです。
- 経営者
- 現場
- 顧客
経営者との対話においては、その企業が生まれた理由、歩んできた道のり、そして目指す未来について、時間をかけて丁寧に語り合います。時には経営者自身も明確に言語化できていない想いが、対話を重ねる中で少しずつ形となって現れてきます。
現場で働く人々の声においては、日々の業務の中で培われた価値観、お客様との接点から生まれた気づき、そして組織の中で暗黙知として受け継がれてきた大切なものごと。それらはデータからは決して見えてこない、生きた「想い」として組織に息づいています。
そして顧客との対話。なぜこのブランドを選んでいただけるのか、どのような価値を感じていただいているのか。時には企業が意識していなかった強みが、顧客との対話を通じて明らかになることもあります。
これらすべてにおいて「傾聴」の姿勢が大切。こうした多層的な対話を通じて、ブランドの本質的な価値が徐々に浮かび上がってくるのです。
本質を見極めるのがプロ
ただ傾聴して終わらせるのではない。会社から出てくる言葉というのは、表層的であることが多いです。
よく出てくる言葉としては、。「顧客第一」「品質重視」―これらの言葉は、確かに間違いではありませんが、その企業ならではの独自性や本質的な価値を表現しきれていないことがほとんどです。
僕たちがするべきは表層的な言葉のむこうにある、根源的な価値観や情熱の源泉を探っていくことです。
ここで注意してほしいのはくれぶれも、単に言葉を聞き取って整理するだけではだめです。ときにあるのは言われたことをそのまま言葉で並べ立てるケースもあるのです。
僕たちがやりたいこと、しなければならないことは、その言葉が生まれた背景に潜む本当の「想い」を探ることなのです。
- なぜその言葉を選んだのか
- その背後にどんな経験や信念があるのか
- どんな未来を描いているのか。
こうした向こう側にある根源を、自分やチームと対話していくことによって導き出していきます。
「かたち」への昇華
発見した「想い」はほとんどが抽象的です。だからこそ、その本質を失うことなく、具体的な「かたち」へと昇華させていく必要があります。
- ビジュアル(ロゴ、色、形)
- 言葉(メッセージ、トーン&マナー)
こうした行為を「かたち」への昇華と考えています。
そして「かたち」に昇華する最終目的は、「思い」を実現させることです。
まず、抽象的な「想い」を、力強く、かつ共感を呼ぶ言葉へと変換していきます。それは単なる美しい言葉ではなく、組織の行動指針となり、人々の心を動かすメッセージとなるものでなければなりません。
次に、その「想い」をビジュアルの領域へと展開していきます。ロゴ、色、形といったデザイン要素を通じて、目に見える「かたち」として表現します。ここでも大切なのは、表層的な美しさではなく、「想い」をいかに的確に表現できるかという点です。
例えば、温もりある関係性を大切にする企業であれば、やわらかな曲線を基調としたロゴデザイン、温かみのある色使い、親しみやすい言葉遣いへと、その「想い」を展開していきます。これらのデザイン要素は決して単独で存在するのではなく、互いに響き合い、調和することで、より深く人々の心に届くものとなります。
このように「かたち」への昇華とは、抽象的な「想い」を、人々が五感で感じ取れる具体的な表現へと変換していく創造的なプロセスなのです。そして、この過程全体を通じて常に意識すべきことは、すべては「想い」の実現のためだという点です。