デザインコントロールとは?うまくいく現場の共通点は?
目次
デザインコントロールとは?
デザインコントロールとは、制作されたデザインが、クライアントの目的・文脈・コンセプトに本当に沿っているかを確認することです。
デザイナーに多いのが、手を動かしているうちに細部に引っ張られたり、自分のデザインへの愛着が生まれることで、成果物を客観的に見られなくなってしまうことです。
だからこそ必要なのが、一歩引いた立場から、意図と成果物を突き合わせる役割だと考えています。
手を動かしていると見えなくなるものがある。
実際にデザイナーをしている方は、一度手を胸に当てて、下記に当てはまるものがないか考えてみてほしいです。
- プロジェクトの本来の目的
何を解決するためのデザインなのか、という大きな前提が細かな制作作業の中で後回しになりがちです。 - クライアントの意図
クライアントが何をもとめているのか、制作に没頭するあまり愛着がわくことで気づきにくくなります。 - コンセプト全体との整合性
パーツ単体の完成度に集中するあまり、コンセプトで語った「らしさ」とズレていても気づきにくくなります。 - 見る側の視点
つくり手の論理が強くなり、実際にそれを見るユーザーや顧客の感覚が見えにくくなります。 - ブランドとの相性
意図していない受け取られ方や、ブランドイメージを損なうリスクに気づきにくくなります。 - 全体のバランス
配色や余白などの部分最適に引っ張られ、画面全体や体験全体のバランスを見失うことがあります。
デザインコントロールの意義
先ほど列挙したように、手を動かしていると見えなくなってしまうものがあります。
言い換えれば、それらは制作の中で生まれやすい「盲点」です。
デザインコントロールとは、こうした盲点をあらためて評価する役割です。
つまりデザインコントロールの意義は、そうした見えなくなりがちな前提や軸を、もう一度テーブルの上に戻すことにあります。
誤解していけないのは、デザインコントロールは制作の良し悪しを判断するわけではない、ということです。
そうではなく、
- 「このデザインは、何のためのものなのか」
- 「誰に、どう届くべきものなのか」
- 「コンセプトやブランドを裏切っていないか」
といった問いを、常に行う行為でもあります。
では誰がこの役割を担うのか?
結論から言えば、デザインコントロールの役割を担うのはプロジェクト全体の目的と文脈を最も深く理解している人です。
必ずしも、肩書きが「デザイナー」や「アートディレクター」である必要はありません。
僕自身は「ディレクター/プロジェクトマネージャー」という立場ですが、実際にはこのデザインコントロールの役割を担っています。
重要なのは、「つくる人」から一歩距離を取りながら、事業の目的、コンセプト、ターゲット、ブランドの背景までを踏まえて、デザインを評価できる立場にいるかどうかです。
手を動かしている本人が、同時にデザインコントロールを担うことも不可能ではありません。
ただしその場合、制作と判断の視点を意識的に切り替える必要があります。
だからこそ多くのプロジェクトでは、制作に直接関わらない、もう一つ外側の視点を持つ人がデザインコントロールを担うことで、判断のブレや思い込みを防ぎやすくなります。
デザインコントロールとは役職ではなく、「視点」と「責任」の問題です。
誰が担うかよりも、その視点がプロジェクトの中に存在しているかどうかが何より重要だと考えています。
デザインコントロールうまく機能している現場の共通点
デザインコントロールがうまく機能している現場には、いくつかの共通点があります。
判断基準が言語化されている
まず、「なぜこのデザインが良いのか」「なぜ直すのか」といった判断基準が、感覚ではなく言葉で共有されています。そのため、議論が「好み」のぶつかり合いになりにくく、話が前に進みやすくなります。
それをうまく行うのが「コンセプト設計」。コンセプトは、デザインの方向性を決めていく推進力があって、制作を進めていくうちに判断に迷ったときに立ち返るための共通言語にもなります。
じゃあ具体的にどんなコンセプトがいいの?と後問が出てくると思います。ただ、これを詳しく語りだすと長くなるので割愛します。
一つだけ言えるのは、みんなが「おっ」と少し驚いたり、「いいね」と心が動くようなものが、良いコンセプトになりやすいということです。
少なくとも、「温かい雰囲気のデザインをつくる」といった抽象的で誰でも言えてしまう言葉では、判断基準としては弱すぎます。
好みと判断を切り分けて話せていること
僕の経験上、多くのプロジェクトで起きがちなのが、デザインを「好み」で判断してしまうことです。とくにデザインに対して高い価値観を持つクライアントほど、「かっこいいか」「おしゃれか」といった
個人の感覚で良し悪しを決めようとしてしまいます。
これは現場で何度も経験してきました。
ただし問題なのは、好みで語られることそのものではありません。
好みと、プロジェクトとしての判断が同じレイヤーで扱われてしまうことです。
うまくいっている現場では、「自分はこう感じる」という主観を一度受け止めたうえで、それが目的やコンセプト、文脈に照らして本当に適切かどうかを、改めて問い直すことができます。
つまり「自分はこう感じる」という主観と、「プロジェクトとして正しいか」という判断が、意識的に分けて扱われています。
デザインを一人で背負わせていない
また、デザインを一人で背負わせていないことも、うまく機能している現場の共通点です。
デザイナー個人のセンスや勘に任せきりにするのではなく、誰かが一歩外側の視点に立ち、そのデザインを客観的に見る体制があります。
先ほども伝えましたが、デザインはどうしても手を動かしている本人ほど細部に意識が向き、全体を俯瞰しづらくなります。だからこそ、制作に直接関わらない立場の人が、目的やコンセプト、ブランドとの整合性を確認することが重要です。
こうした外側の視点があることで、デザインは個人の才能に依存しすぎることなく、プロジェクトとして安定して前に進むようになります。
修正が否定にならない空気がある
後これも大事。うまく機能していないとなぜか知らないですが「修正が否定」となってしまう空気感があります。
修正が入るたびに、「自分のデザインが否定された」と感じてしまうと、議論はどうしても萎縮しがちになります。
その結果、本来確認すべき点まで踏み込めなくなってしまうことがあります。
うまくいっている現場では、修正はダメ出しではなく、目的やコンセプトと照らし合わせるための確認として扱われます。
「より良くするための調整」であり、個人のセンスや能力を否定するものではない、という共通認識があることで、建設的なやり取りが続きやすくなります。
この空気があるかどうかは、デザインの質だけでなく、チームの信頼関係にも大きく影響します。
あなたは間違えていないですか?クライアントの好みもデザインコントロールのひとつ
前述の2つ目にお伝えした「好み」という観点。制作の現場では「クライアントの好みに左右されて制作がうまくいかない・・・」というケースがあると思います。
しかしながら誤解してはいけないのは、「クライアントの好み」もまた、きちんと評価されるべき判断基準の一つだということです。
「このクライアントは好みで判断するから」と切り捨てて、目的を達成するためにはこちらのデザインのほうが絶対に正しい、と一方的に決めてしまうのは望ましくありません。
なぜなら、クライアントの好みの背景には、これまでの事業経験や成功体験、大切にしてきた価値観が含まれていることが多いからです。
デザインコントロールとは、好みを排除することでも、正しさを押しつけることでもなく、クライアントの好みと、プロジェクトの目的やコンセプトとのあいだにきちんと折り合いをつけることだと考えています。
最後にまとめ
デザインコントロールとは、デザインの良し悪しを決めることではありません。手を動かす中で見えなくなりがちな、目的や文脈、コンセプト、見る側の視点といった前提を、もう一度テーブルの上に戻し続ける役割です。
好みを否定するのではなく、判断できる形に翻訳し、プロジェクトとして正しいかどうかを問い直す。
そのために、コンセプトという共通言語があり、デザインを一人で背負わせない体制があり、修正が否定にならない空気が重要になります。
デザインコントロールは役職の話ではなく、視点と責任の話です。この視点があるかどうかで、デザインは単なる表現で終わるか、課題解決のツールとして機能するかが大きく変わります。
手を動かすことと同じくらい、立ち止まって全体を見ること。それが、デザインを前に進めるために欠かせない考え方だと思います。