ブランドアイデンティティとは?【⇦分かりやすく説明します】
ブランド戦略策定を進める上で、必ず覚えておくべき概念、ブランドアイデンティティ(BI)。
上流工程から関わるデザイナーになるためには、ブランドアイデンティティの意味を正確に理解している必要があります。
目次
ブランドアイデンティティとは?【⇦ブランディングの根本ですよ】
ブランドアイデンティティとは、簡単にいってしまえば「顧客に自社ブランドをどう思ってもらいたいか?」を決めて、それを明文化することです。
つまり「僕たちのブランドは〇〇なんだよ。だから〇〇と認識してくださいね」というふうに〇〇=「ブランドらしさ」に当たる部分を会社が主体となって規定していくことなんです。
ここでいう「ブランドらしさ」とは、ブランドの根幹となる価値・個性のこと。
そしてブランドアイデンティティで重要なのは、作り手側(企業側)がそれを自由に定義することができる点です。
ブランドアイデンティティはとがれば尖るほど「独自性」が生まれます。
ブランドアイデンティティってなんで大切なんだろう?
企業の軸を担うものだから
ブランド・アイデンティティは「顧客にブランドをどう思ってもらいたいか?」という“ブランドの個性”において軸となる中心概念です。
つまり、ブランドの認識形成に大きく影響するということです。
そしてユニークなブランドの存在意義であればあるほど、“独自性”が養われていきます。
強いブランドを作るため
どれだけいい商品・サービスを作ったとしても、かならず選ばれる(=売れるわけ)ではありません。
「いかにして強いブランドを作り上げるのか?」という点から考えた場合、ブランディングは「一貫性」が最も重要です。
なぜならある場面で体験したことが、別の場面では全く違う体験になっていたりしたら、「あれこれ?これ同じブランドか?」とバラバラの印象を持ちませんか?
ブランディングは結局のところイメージ戦略。
つまり顧客の印象をどうやってコントロールするかが勝負になってきます。
だから企業側が与えたいブランドアイデンティティを定めておくことで、顧客側が「ブランドって〇〇だよね」と、受け取る「〇〇」の部分を統一できるわけです。
そのために、ブランドのロゴやタグライン、カラー、フォント、ブランドメッセージなど、ブランドを構成する要素全てにおいて統一の内容を作成する必要があるんです。
立ち返る旗印にもなる
ブランド戦略を展開する社員含めたメンバーが頭の中で、各々が「ブランドって〇〇というものだ」勝手に抱いてしまうと、ブランドの一貫性が崩れてしまいます。
だからブランド内部でそういった食い違いが生まれないように、ブランドアイデンティティという“旗印”を定めることで、全ての活動を通じて同様のブランド価値を提供できることになります。
そしてブランド・アイデンティティという旗印を明確しておけば、事業運営で迷ったときにすぐに立ち返ることもできますよね。
ブランド構築の初手が、ブランドアイデンティティを決めること
ブランド構築の過程において、まず最初に取り組むべきことこそ、ブランドアイデンティティの明確化です。
なぜなら「ブランドとは何者か?」という自己を規定する概念だからです。
そして自分たちが何者であるかを明らかにして、その問いへの答えを自ら生み出すことで、ブランド活動全般を統合し牽引していくことにもなります。
ブランドアイデンティティの理想形とは?
さてブランドアイデンティティの概念がわかったと思いますが、その目指すべきゴールとはどこでしょうか。
それはブランドアイデンティティが社内外に浸透し切った後に、顧客があるブランド名を見たり、聞いたりしたときに、顧客が共通の具体的なイメージを持ってもらうこと。
さまざまな定義に触れよう!
アーカー教授は?
ブランドの研究者であるアーカー教授はブランド優位の戦略 の中でブランドアイデンティティを下記のように定義しています。
ブランド・アイデンティティとは、ブランド戦略を策定する際の長期的ビジョンの核となるべきものである。そして、それは戦略立案者が創造し、維持しようと意図する「ブランド連想のユニークな集合」(a unique set of brand association)であり、 ブランドに一体性を与え、マーケティング・ミックスの方向性と内容を規定するものである。
上記の言葉の中で“集合体”と言う言うのが非常に重要です。
一般財団法人ブランドマネージャー認定協会は?
企業がある製品・サービスが「何ものか」を示すため定める「旗印」のこと。言い換えると「ブランド独自の価値」をひとことで表したもの。
ブランドアイデンティティとその他の概念との関係性
ビジュアルアイデンティティとコーポレートアイデンティティとの違いは?
VI(ビジュアルアイデンティティ)とコーポレートアイデンティティ(CI)どちらもブランディングにおいて「ブランドのイメージ形成」に関連するキーワードですが、それぞれ異なった意味を持ちます。
下記に違いを書くとすると、結論から言うと、下記の通りです。
- ブランドアイデンティティ(BI)⇨「根幹」=「何を伝えたいのか」
- ビジュアルアイデンティティ(VI)⇨「視覚的な表現」=「どのように伝えるか」
- コーポレートアイデンティティ(CI)⇨「企業全体」=「全体がどう統一されたイメージや価値を持つか」
とはいえこれらの概念は、企業やブランドが消費者と強い関係を築くために、相互に連携しあって、一緒に「ブランド」というゴールを作り出す概念です。
つまりブランドアイデンティティ(BI)が明確であれば、それを基にしたビジュアルアイデンティティ(VI)が統一されて、さまざまな活動・ブランディングを通じて、一貫性のあるコーポレートアイデンティティ(CI)が構築されるわけです。
ブランドイメージとの違いは?
「ブランドイメージって言葉があるけれど、ブランドアイデンティティとの違いは?」
この両者が“意図的”か“意図的ではないか?”というところです。
ブランドアイデンティティは“意図的”に構築する点にあります。先程ブランドアイデンティティは作り手側、つまり企業側が自由に作って良いと話しましたが、企業側が伝えたいと考えているブランドの個性や価値を表現するものです。
一方、ブランドイメージは、消費者が”主観的”にブランドをどのように認識し、感じるかが重要です。これは、広告やプロモーション、製品やサービスの実際の体験、口コミなど、さまざまな要素によって徐々に作られていくものです。
例えば、アップルはシンプルで洗練されたデザインや革新的な技術をブランドアイデンティティとして打ち出していますが、それにより消費者が高品質で使いやすい製品をイメージするのがブランドイメージです。
ブランドアイデンティティとブランドイメージは、全く離れた概念ではありません。
非常に密接な関係性があります。
なぜならブランドアイデンティティは、企業が表現するものであり、ブランドイメージは、消費者が実際に感じているそのブランドの印象です。
企業が消費者に伝えたいと考えているブランドの個性や価値=ブランドアイデンティティを適切に構築し、一貫性のあるメッセージを伝えていくことで、消費者にはちゃんとしたブランドイメージを形成されて、向上させることができます。つまり、ブランドアイデンティティはブランドイメージを構築するための基盤となります。
ブランドアイデンティティを決める上で大切なこと
誰にでも分かりやすい言葉を使うこと
まず、ブランドアイデンティティは、企業の核心や人格を示すものとして位置づけられます。そのため、言葉の選択には極めて慎重であるべきです。この言葉は、多様な人々にとって明確で、誤解の少ないものでなければなりません。解釈の幅を狭くするために、誰もが理解できるシンプルかつ明確な言葉を選ぶことが重要です。
根ざしている本質を発掘すること
ブランド自体は新たに作り出されるものではなく、実は企業の中核に既に存在しています。企業がこれまでに築き上げてきた信頼や、顧客に支持され続ける理由が、そのブランドの真髄を形作っていると言えるでしょう。企業の製品やサービスに対する顧客の信頼や支持の理由が、ブランドアイデンティティの一部となるのです。もし、その核心が欠けていれば、消費者がその企業の製品やサービスを選ぶ動機は薄れるかもしれません。
ロゴなどのさまざまな要素で作り上げられる
ブランドアイデンティティは、単なるロゴやスローガンにとどまらない、非常に多岐にわたる要素から成り立っているのです。具体的には、ロゴ、色、タイポグラフィなどのビジュアル面から、メッセージ、トーン、個性といったコミュニケーションの側面まで、すべてがブランドアイデンティティの一部となります。
これらの要素が整合性を持ち、一貫性があると、それは強力なブランドアイデンティティを形成することになります。なぜなら、強力なアイデンティティは企業を市場における競合他社から明確に区別し、消費者に対して企業の真の価値や独自性を伝える力を持つからです。
例えば、有名なブランドのロゴだけを見ても、そのブランドの価値観や個性、そして提供する製品やサービスの質を感じ取ることができるのは、そのブランドが持つ強力なアイデンティティのおかげと言えるでしょう。
ブランドアイデンティティの事例
レジナス化成株式会社
レジナス化成株式会社は、東京都中央区日本橋に本社を構える、機能性接着剤など工業系材料資材を中心に開発・製造・販売する企業です。
彼らのブランドアイデンティティは下記の通り。
人と社会、未来をつなぐ
私たちの製品は、あらゆるプロダクトに組み入れられています。 たとえばスマートフォンの電子回路基盤。 このデバイスは600~800種類の部品から構成されています。
ひとつひとつのパーツは、小さくても重要な役割を担っており それらをきちんと接着したり、保護することがレジナス化成が作り出す製品の役目です。 用途目的によって、要求される機能や性能が異なります。 使われる製造プロセスによって、性質が変わります。 ひとつとして同じ製品はなく、年間に製造する製品は約350種類にものぼります。
それでもさらに研究開発を重ね、新しい価値を創造する。 約束した品質を保ち、安定的に製造・供給する。 ものづくりのプライドを懸けて、日々向き合っています。
お客様の希望を満たし、そして生活する皆さまの暮らしを もっと豊かで、便利に出来たら それは、何にもかえがたい私たちのよろこびです。
https://www.resinous-kasei.co.jp/company/philosophy/
接着剤というニッチな製品も、部品などを接着する・保護する、というところに大きな役割を持っているのが分かります。
リゾートトラストグループ
ブランドアイデンティティ
「ご一緒します、いい人生」 より豊かで、しあわせな時間(とき)を創造します
https://www.resorttrust.co.jp/recruiting_site/philosophy/identity/
リゾートトラストは、愛知県名古屋市中区に本社を置く総合リゾート企業グループです。
有名なのはホテル事業で、会員制リゾートホテル「エクシブ 」・「ベイコート倶楽部」なら知っている方は多いのではないでしょうか。
ホテル事業だけでなはく、ゴルフ事業、メディカル事業、シニアライフ事業など“会員制”を中心とした幅広い事業を手がけており、今では18.5万人を超える会員がいる企業。
そんなリゾートトラストは、グループ共通のブランド・アイデンティティを2021年4月1日に作っています。その背景としてはコロナ。ホテル事業において厳しいコロナ禍において、社会やお客様に対して、自分たちがどんな価値提供したいかを改めて考えなおしたのです。
それが以下の通り。
お客様に「⼀⽣涯」お付き合いしていただける企業グループを⽬指して、リゾートトラストグループの事業領域は、⼈⽣(=時間)そのものです。 お客様お一人おひとりと⻑くお付き合いのできる「会員制」だからこそ実現できる最⾼のホスピタリティを発揮し、お客様に⼀⽣涯お付き合いしていただける企業グループを⽬指します。
https://identity.rtg.jp/philosophy/
上記の中でも、ブランドアイデンティティとして特に重要なのが、お客様に一生涯を通じてお付き合いいただける企業を目指すという点。
というのも、彼らが得意とするのは“会員制事業”。
「余暇」の分野では、会員制リゾートホテル事業のリーディングカンパニーとして、会員制ホテルから一般ラグ ジュアリーホテルに至るまで、国内、海外でのホテル経営を拡大しております。 「健康」の分野では、会員制総合メディカル倶楽部における検診関連サービスや一般向けの健診施設の運 営支援をコアとする「メディカル事業」、アクティブシニア向けの住宅や、介護付きの高齢者住宅を運営する 「シニアライフ事業」をはじめ、早期発見、早期治療を目指した、医療関連サービスの拡大を続けております。
https://www.resorttrust.co.jp/ir/investors/plan/pdf/pressrelease_2105.pdf
このようにテーラーメイドの商品やサービスのご提供に先にあるのは、一人の豊かで幸せな人生であり、彼らの提供価値は「一人一人のお客様の人生そのものと向き合えること」。