ブランドステートメントとは?どんな意味?【作り方・事例をまるっと紹介】

  • ブランディング

近年、ブランディングという言葉がよく日本企業で使われ、経営者だけでなくデザイナーが主体となって取り組むケースも増えてきています。

ただ企業がブランディングを正確に実施するにあたって、ブランディング周りで使用されるキーワードが「何を意味するのか」という部分をしっかりと把握するべきです。

今回は「ブランドステートメント」という用語について説明します。

ブランドステートメントとは何か?

ブランドステートメントとは、企業・ブランドが目指す方向性を示すものであり、その価値観・アイデンティティ・使命・存在意義を簡潔な文章で明文化し、企業活動の拠り所となる中核的概念のこと。

要は「このブランドとは何か?」という共通認識を作ってブランドを言語化していくのです。

共通認識化してしまえば、ブランディング全般でブレがない一貫した活動を行えますよね。

ブランドステートメントで覚えておくべき点は、『企業がブランドターゲットに対して何を提供するかを表明して「約束する」こと。

だからミッションやビジョンといった企業の根っこにある存在意義は要素として盛り込んであげて

  • ブランドは何を表しているか。
  • ブランドは何を提供しているのか。

といった消費者がブランドに対して持つイメージ形成を正確なものとする必要があります。

 

ブランドステートメントには規定がなく、コンパクトに文章化したものから、ロゴやビジュアル規定の細部にまでまとめ数十ページに渡るものまであります。

ブランドステートメントの重要性

ブランドステートメントは「ブランドイメージ形成」に重要な役割を持ちます。

対外的な視点ではブランドステートメントはターゲットにブランドの立ち位置をしっかりと伝えて、「我々はこういった方向に進むのだ」「こういった価値観があるのだ」という”与えたいブランドイメージを正確に伝えることができるからです。

ブランドはどうしてもイメージ先行になりがちなので、明文化という形で、方向性や価値観を伝えられれば、ターゲットが持つイメージと企業が与えたいイメージとの間の齟齬がなくなります。

インナー目線であれば従業員に対するガイドラインとしても機能します。つまり企業のコミュニケーション戦略やマーケティング戦略の基盤となり、もし新しい何かを始めるときには「そういえば僕たちが目指す方向ってなんだっけ?」といつでも立ち返る拠り所としての役割も担うのです。

ブランドステートメントとその他の言葉との関係性

ブランドスローガンの違いは?補完する役割も

ブランドステートメントと似た言葉に、「ブランドスローガン」という言葉もあります。

僕はこの2つは明確に違いがあると思っています。

 

ブランドスローガンは一言でまとめるキャッチコピー的な立ち位置である一方、ブランドステートメントはそのスローガンの内容を具体化させて、補完する役割があります。

例えば東京商工会議所では下記のようにブランドスローガン・ブランドステートメントを定めています。

■ブランドスローガン

挑みつづける、変わらぬ意志で。

■ブランドステートメント

国の繁栄が、 国の繁栄につながる 初代会頭・渋沢栄一の、 この想いのもとに 創立された、東京商工会議所。 以来140年、私たちの使命は、変わることはありません。 “企業が繁栄し、地域の発展につなげ、 そして未来に夢が持てる、幸せを実感できる社会を実現する。” そのために、人・企業・地域をつなぎ、ともに未来を創る。 課題に対して、ともに向き合い、ともに考え、解決する。 革期を迎えた今、 直面する課題が大きく変わろうとも、 変化を恐れない積極的な姿勢で、 使命を果たすために挑みつづけること。 それこそが、創立以来の意志を受け継いできた、私たちの想いです。 国の繁栄につながる民の繁栄の実現のために。 そして、 明日の東京、日本のために。 東京商工会議所は、変わらぬ意志で、挑みつづけます

とはいえ、世間的にブランドスローガンと題して、ブランドステートメント的な役割を担わせている企業もあるのが事実なので、その辺りは使用する企業によってバラバラな印象があります。

 

ブランドアイデンティティとの違いは?

ブランドステートメントは、「ブランドアイデンティティを表す言葉」です。そのためブランドステートメントとブランドアイデンティティを混同しないようにしましょう。

ブランドアイデンティティは、「自社ブランドを、ターゲットからどうイメージしてほしいか」を明確化することです。だから視点としては「企業側」であって、ターゲットには示さなくてもいい概念です。

反対にブランドステートメントは、そのブランドアイデンティティをメッセージ化させて、ターゲットに向けて「伝える」というニュアンスが強いです。つまりブランドアイデンティティをそのまま伝えるのではなく、「ブランドがどのような価値提供をするのか」が分かるように表現してあげるのです。

企業理念との違いは?

企業理念は企業運営においての根本理念「どう在るべきか」を示すものですが、ブランド・ステートメントはブランドが消費者に提供する約束という意味合いが強くあります。

そのためブランドステートメントのほうが、分かりやすくキャッチーな言葉が使われるケースがあります。

ブランドステートメントの作り方について

自分たちは何になりたいんだろう?と未来志向の視点を

もし皆さんがブランドステートメントを作ろうと考えているなら、「ブランドはどうなりたいか?」という点をとことん突き詰めていくべきです。

その際は目先の利益だったり現在だけではなく、ブランドの今の状態からどう将来飛躍しようかと未来視点も持つべきです。

シンプルな表現かつ強い印象を与えよう

ブランドステートメントは、より多くの人に“伝わり、覚えてもらう”必要があります。

だからこそ、シンプルで明快な表現にしましょう。専門用語や煩雑な表現は避け、できるだけシンプルな言葉でまとめることが大切です。

ただシンプルであればいいわけではなく、一度聞いたら忘れられない印象的な表現にしましょう。印象的な表現は、消費者にブランドを覚えてもらうために重要です。

 

ブランドターゲットに合わせた言葉遣いをする

ブランドステートメントを作るときは必ずブランドターゲットを定めます。

だからそのターゲット層に合わせた表現にすることもも大切です。ターゲット層が誰であるかを把握し、その人たちにとって響く言葉を選びます。

 

ブランドステートメントを作るタイミングは?

ブランドステートメントはいつ作るか?という点も伝えておきます。

 

よくあるケースとしては下記の通りです。

 

・ブランドが立ち上がる際に作成されることが多いです。

・創業60周年を契機として、「ブランドスローガン」および「ブランドステートメント」を策定いたしました。

しかし、既存のブランドでも、ブランドの再構築やリブランディングを行う際にもブランドステートメントの見直しが必要になる場合があります。

また、新しい商品やサービスを開発する際にも、その商品やサービスに対応したブランドステートメントを作成することが重要です。さらに、競合他社との差別化を図るためにも、ブランドステートメントを見直すことが必要になる場合があります。

以上のように、ブランドステートメントを作るタイミングには、ブランドのステージや状況、商品やサービスの開発など、様々な要素が考慮されます。ただし、一度作成したブランドステートメントも、定期的に見直し、必要に応じて改善することが重要です。

ブランドステートメントの事例

ORICO(オリコ)

 

あなたが何かをかなえようとするとき。
自信を持って一歩前へ踏み出せるように、
オリコはそっと後押ししたい。

めざすのは、期待に応えることよりも期待を上回ること。
さまざまな金融サービスをもっと便利に。
そしてより確かな安全と安心を。

いまこの瞬間もオリコは、
あなたの「かなえる」のそばで挑戦を続けています。
※参考 https://www.orico.co.jp/company/corporate/brand/

クレジットカード会社で有名なオリコ。

ブランドスローガンは『かなえる、のそばに。』は2014年に策定されました。

なにかをかなえたいと思うすべての人に、寄り添える、そういった企業としての存在意義を明確にされています。

ちなみに公式サイトにはオレンジ色の羽をつけた老若男女のイラストがありますが、以下のような意味があるそうです。

「描かれたさまざまな人たちには、それぞれのライフ、それぞれの夢があります。人々に書き込まれていくオレンジ色(オリコのコーポレートカラー)の翼は、夢の実現を後押しする象徴。その翼を描くオレンジ色のペンを持った手が“オリコ”を表しています。オリコはさまざまな人に寄り添い、夢の実現をサポートする存在であることを表現しています。」
※https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000049481.html

CORONA

快適とはなにか。

それは、温度や湿度にとどまらない。

ココロとカラダが望むものすべて。

そこには、無限の可能性がある。 私たちの未来がある。 さあ、つぎの快適をつくろう。 今までの常識に捉われず。

培ってきた技術と経験を注ぎ

考えよう。 追究しよう。 開発しよう。

くらしをもっと豊かにするために。
※参考:https://www.corona.co.jp/brand/

 

ブランドスローガンは「つぎの快適をつくろう」です。快適という言葉はよく使われますが、実際のところ曖昧とした抽象的な表現でもあります。

CORONAはブランドステートメントを通じて、その”快適”という言葉を定義づけし、最後には”暮らし”とリンクさせています。

ニチイ

人はやさしい。そう思いませんか。
困っている人がいれば、声をかけずにはいられない。倒れている人がいれば、
手をさしのべずにはいられないし、悲しむ人がいれば、胸を痛めずにはいられない。
人のそんなやさしさを、強さにすること。
それがニチイの仕事です。

人が本来持っている、人を心から想うやさしさ。
それを、社会を支える、誠意ある強さに育てること。
それが、創業当時から私たちニチイの誇りとしている仕事なのです。
介護と、医療と、そして保育。
かつてない高齢社会を迎えるこの国の、その将来を思う時、
何にも増して、この分野にこそ、多くの人材が育たなければいけない。
そう信じているのです。

人のために働く幸福。
これからも、この仕事に変らぬ情熱を注ぎたい、私たちニチイです。
※参考:https://www.nichiigakkan.co.jp/company/brand.html

ブランドスローガンは「やさしさを、私たちの強さにしたい。」です。

スローガン含めて詳しく説明しているのを「ブランドステートメント」としています。

ニチイはこれまで医療・介護・保育を中心として、そこから人材教育や就業などのサポートを続けてきた「総合生活支援企業」です。

人間がそもそも持っている性質「やさしさ」に注目し、それを強さとすることが「人間性」を磨くことになり、社会の中で輝かせることを意味して、ニチイずっと続けてきた仕事の中心にあるそうです。

そして”強さ”という点では、力による支配ではなく、”人や自然を思いやるやさしさ”こそ人の強さを決める基準担ってほしいという想いが込められています。

 

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Hee

地方でWebディレクター。コンセプトメイキングや情報設計を含めて上流工程から制作業務に携わっています。コーポレートサイト、ECサイト、自治体サイト、ブランドサイト、グラフィックなど他ジャンルを経験。多いときには20案件をもつことも。デザインメンターでは複数のデザイナーに対するデザインディレクションの経験、ブランディング提案の経験から学んだことを発信しています。