カテゴリーエントリーポイント(CEP)とは?←ブランドの強化に必要な要素です。

  • ブランディング

カテゴリーエントリーポイントはコンテンツ作りの全ての起点とするべき考え方です。

というのも、そもそもデザインはコンテンツの一種であるから。そして僕がデザインを提案するときに、いつもカテゴリーエントリーポイントを意識しています。

カテゴリーエントリーポイントという概念を知っておくことで、説得力をもった提案できるようになりますし、収益性アップ、ブランディング成功というビジネス課題を解決する考え方を持つことができます。

カテゴリーエントリーポイントとは?

カテゴリーエントリーポイントとは、消費者が特定のブランドや商品を思い出すきっかけとなる「生活文脈上の接点」です。

家を買おう、避暑地に行こう、イタリアンを食べよう、炭酸水を飲もう。こうした商品やサービスへの需要が生まれた瞬間に、特定のブランドが自然と想起される状況のことを指します。

例えば、「コーヒー」なら「美味しいホームカフェを楽しむ朝のひととき」、「レストランや娯楽施設」なら「恋人と休日に遊ぶとき」、「スパやリゾート施設」なら「リラックスして癒やされたい」です。

そしてカテゴリーエントリーポイントで大切なのは、顧客が生活しているさまざまな文脈の中で、特定のシーンやタイミングになった時に商品やブランドが“頭に思い浮かけとなるきっかけとなる、記憶や連想を生み出すこと”なのです。

缶コーヒーで見る、カテゴリーエントリーポイントの具体例

「缶コーヒー」という同じ商品カテゴリーでも、人によって購入のきっかけは大きく異なります。具体的な例を見てみましょう。

  • 朝型の会社員Aさんの場合は「今日も早起き。いつもの駅前のコンビニで、お気に入りの缶コーヒーを買って出勤しよう」
  • 仕事中のフリーランスBさんの場合は「締め切り作業が佳境に入ってきた。眠気を吹き飛ばすために、近くのコンビニで効き目の強い缶コーヒーを買おう」

 このように、同じ「缶コーヒー」でも、購入する人の状況や目的によって、想起されるブランドや商品は変わってきます。

重要なのは、「いつ」「どこで」「誰が」「なぜ」その商品を求めるのか、という文脈です。その瞬間に思い浮かべてもらえるブランドになること。それがカテゴリーエントリーポイントの本質なのです。

購買の本質を理解しよう、なぜ「買う理由作り」が重要なのか?

顧客は「商品やサービスが必要だから」という理由だけでは購入を決定しません。その「必要性」を感じた瞬間に、なぜあなたのブランドを選ぶべきなのか、その「理由」が明確でなければならないのです。

例えば、月一プレミアムケアを提供する美容サロンであれば下記のような購買理由が考えられます。

  1. 「忙しい」からこそ必要な自分への投資時間
  2. 「月1回」という無理のないペース設定
  3. 「ご褒美」として納得できる価値提供
  4. 「継続」による美容効果の実感

僕たちクリエイターはこうした「買う理由作り」を広告を通じて提供しなければならないのです。

そのために顧客の生活文脈に深く寄り添い、「そうそう、こんな時にはあのブランドがぴったりだ」と自然に思い出してもらえる関係性を築くこと。それこそが、継続的な売上につながる本質的なブランド戦略なのです。

買う理由を構成する3つの要素

適切なタイミング

商品やサービスとの出会いは、タイミングが全て。顧客のニーズが発生するその瞬間に、自然な形でブランドが想起される必要があります。それは日常生活のシーンに溶け込むように存在し、季節や時間帯に応じて最適な形で提供されることが重要です。

具体的な状況設定

一日の疲れを癒したい帰り道に立ち寄れるカフェ、忙しい子育て中でも無理なく通えるジム、仕事の合間にさっと利用できるサービス。このように、顧客の具体的な状況に寄り添った提案が、選ばれる理由となります。

感情的な価値提供

ここでしか味わえない特別な体験、長年の付き合いで培われた安心できる信頼関係、自分らしさを思う存分に表現できる場所。このような感情的な価値は、単なる機能や利便性を超えた、強い購買理由となります。

カテゴリーエントリーポイントで「買う理由」を設計しよう!

カテゴリーエントリーポイント(CEP)は、顧客が「買いたい」と思う瞬間に、あなたのブランドを想起してもらうための重要な接点です。これを「買う理由」と結びつけることで、より強力な購買動機を作ることができます。

CEPは単なる接点ではなく、顧客の「買いたい」という感情を呼び起こす重要な機会です。それぞれのCEPに明確な「買う理由」を紐づけることで、より強力な購買動機を生み出すことができます。

結論:利益アップしたいなら、カテゴリーエントリーポイントを増やそう!

売上や利益を増やしたいなら、率先してやるべきが、カテゴリーエントリーポイント(CEP)を意図的に増やすことです。

カテゴリーエントリーポイントの増加は「想起の機会が増える」ことにつながり、その分「ブランドを思い出す確率が増える」からです。

そしてマーケティングの考え方で思い出される確率が高い商品やブランドは、購入の可能性が高まります。これを僕は、「想起の面をどれだけ広く取れるか?」と言ってます。

さらにそれらの連想が相互に連携していれば、想起を強めることができます。

具体例:分譲住宅会社の場合

例えば、「分譲住宅会社」というカテゴリーについて考えてみましょう。

予算重視層「注文住宅は高額すぎる…でも、デザイン性は譲れない」へのアプローチ

  • デザイン性の高い建売住宅の提案
  • 価格帯を抑えながらの質の高い住空間の実現

便利さ重視層「土地探しから始めるのは大変…」へのアプローチ

  • 土地込みのパッケージ提案
  • 希望エリアですぐに住める物件の提案

こだわり派へのアプローチ

  • シンプルな間取りでもカスタマイズ可能
  • インテリアのカスタマイズオプション充実
  • SNSでの情報発信の充実

個々のCEPを単独で存在させるのではなく、相互に連携させることで、ブランド想起の効果を高められます。

例えば:

  • インスタグラムでデザイン性をアピール
  • 実例写真で予算内での実現可能性を示す
  • 営業担当者の丁寧な対応で安心感を提供

このように、様々な接点で一貫したブランドメッセージを発信することで、より強力な想起効果が期待できます。

弱いブランドが、強いブランドになるためには?

強いブランドは多くのカテゴリーエントリーポイントを持っています。実際、市場シェアが高いブランドほど、多くのカテゴリーエントリーポイントを持っています。

つまり小さなブランドを成長させるためには、先程お伝えしたようにカテゴリーエントリーポイント(CEP)を少しずつ増やしていく必要があるのです。

カテゴリーエントリーポイントの数が多ければ多いほど、ブランドの露出や認知度が高まり、顧客にとっての選択肢となる可能性が高まりますよね。

カテゴリーエントリーポイントのフレームワーク

僕がカテゴリーエントリーポイントを効果的に見つけ出すために、5W1Hの要素を活用した体系的なアプローチを紹介します。

5W分析を使うことで、各カテゴリーにおける具体的なエントリーポイントを体系的に整理し、より効果的なマーケティング戦略を立てることができます。それぞれのポイントで顧客の具体的なニーズと状況を把握することで、より的確なサービス提供が可能になります。

注意してほしいのは、あくまで「顧客目線」で考えること。つまり「カテゴリー」を使ったり、選んだりするときに「顧客がどういうシチュエーションにいるか?」を想像することです。

例えば「コーヒー」というカテゴリーなら、「朝のリフレッシュタイムにひとりでまったりと家コーヒー」という感じでコーヒーを使用するシーンをイメージするのです。これを今回のフレームワークを使うことで詳細を詰めることができるのです。

Why(目的):行動の根本的な動機

まず、ターゲットがどのような目的を持っているのかを考えます。たとえば、お腹を満たしたい、恋人と楽しい時間を過ごしたいなどです。あるいは、楽しいや幸せといった気分的なことでもいです。「朝のリフレッシュタイムにひとりでまったりと家コーヒー」なら、リフレッシュしたいが目的になります。

  • 機能的ニーズ:空腹を満たす、疲れを取る
  • 感情的ニーズ:リラックスしたい、幸せを感じたい
  • 社会的ニーズ:誰かと時間を共有したい

When(時間):利用タイミング

次に、ターゲットが目的を実現しようとする時間帯を考えます。時間帯によって、人々のニーズや行動パターンは異ります。朝、昼、夕方、夜など時間帯、あるいは詳細にいうなら、「夏の暑い日の午後」もありです。「朝のリフレッシュタイムにひとりでまったりと家コーヒー」なら「朝」という部分ですね。

その他、母が定年退職を迎えた時、父の日のプレゼントに。

  • 時間帯:朝、昼、夜
  • 季節:夏の暑い日、冬の寒い朝
  • ライフイベント:記念日、誕生日

Where(場所):利用環境

行動の動機となる場所を考えます。家、オフィス、外出先、特定のイベント会場など。当然、場所によっても需要やシチュエーションは異なるからです。

「朝のリフレッシュタイムにひとりでまったりと家コーヒー」なら「家」の部分です。

  • プライベート空間:自宅、マイカー
  • パブリック空間:オフィス、商業施設
  • 特定の場所:イベント会場、観光地

Who(人):関係者

目的と場所と時間にいるのは「誰か?」という特定の人物を考えます。そこにいるのは子どもかもしれませんし、家族あるいはビジネスマンかもしれません。要は「誰に対して」自社ブランドを訴求するかを考えるのです。

「朝のリフレッシュタイムにひとりでまったりと家コーヒー」なら「ひとり」という部分です。

What(対象):具体的な商品・サービス

最後に、顧客が利用する商品やサービスを考えてみましょう。ビール、映画鑑賞、レストランでの食事などです。

「朝のリフレッシュタイムにひとりでまったりと家コーヒー」なら「ひとり」という部分です。

カテゴリーエントリポイント実践フレームワーク:5W×買う理由

1. コーヒーショップ

朝のプレミアムタイム→「いつもより少し早く目覚めて、ゆっくりコーヒーを楽しみたい」

心地よい朝のスタートを約束する特別な時間。通勤前のビジネスパーソンが、駅周辺で一杯のこだわりコーヒーを通じて、自分だけの贅沢な時間を過ごせる空間を提供します。早起きしてでも立ち寄りたくなる、そんな価値ある体験を実現します。

カテゴリーエントリーポイント要素

  • Why:心地よい一日のスタートを切りたい
  • When:通勤前の朝時間
  • Where:駅周辺のショップ
  • Who:一人のビジネスパーソン
  • What:こだわりの一杯のコーヒー

買う理由の整理

  • 感情的価値: 一日の始まりを特別なものにしたい
  • 機能的価値: 質の高いコーヒーで目覚めを促進
  • 状況的価値: 通勤途中で立ち寄れる利便性

アフタヌーンオアシス→「オフィス街で、ほっと一息つける隠れ家的な空間」

仕事の合間に心身をリセットできる隠れ家的空間。オフィス街の喧騒から離れ、一人でも同僚とでも気軽に訪れることができます。コーヒーと軽食を通じて、午後の仕事への活力を取り戻せる特別な時間を提供します。

カテゴリーエントリーポイント要素

  • Why:リフレッシュ、気分転換
  • When:午後の仕事の合間
  • Where:オフィス街の隠れ家的空間
  • Who:一人または同僚と
  • What:コーヒーと軽食

買う理由の整理

  • 感情的価値: 仕事のストレスから一時的な解放
  • 機能的価値: 集中力の回復、午後の活力チャージ
  • 状況的価値: オフィスから近い、気軽に利用可能

2. フィットネスジムの場合

ライフスタイルフィットネス:「無理なく続けられる、日常的な運動習慣作り」「健康維持を日常に溶け込ませる」

健康意識の高い30-40代に向けた、持続可能な運動習慣づくりのサポート。自宅や職場近くの利便性の高い立地で、朝活や帰宅前に無理なく通える環境を整備。有酸素運動とマシントレーニングを通じて、着実な健康維持をサポートします。

  • Why:健康的な生活習慣の確立
  • When:平日の朝または夕方
  • Where:自宅や職場近くのジム
  • Who:健康意識の高い30-40代
  • What:有酸素運動とマシントレーニング

価値の3層構造

  • 感情的価値
    • 健康的な生活を送っている自信
    • 自己管理ができている充実感
    • 前向きな生活習慣の実感
  • 機能的価値
    • 効果的な運動プログラム
    • 専門トレーナーのサポート
    • 最新のトレーニング設備
  • 状況的価値
    • 生活圏内での便利な立地
    • 朝活・帰宅前に立ち寄れる
    • 仕事スケジュールとの両立

トランスフォーメーションプログラム:「理想の自分に変化するための確実なステップ」

理想の体型実現を目指す女性に向けた、結果にこだわるパーソナライズドプログラム。駅近の好立地で、仕事帰りでも通いやすい環境を提供。専門トレーナーによる個別指導で、確実な変化を実感できます。

  • Why:体型改善、自信をつける
  • When:仕事帰りの夜間
  • Where:駅近のジム
  • Who:結果を求める女性
  • What:パーソナルトレーニング

価値の3層構造

  • 感情的価値
    • 理想の自分への変化の実感
    • 達成感と自信の獲得
    • 周囲からの評価向上
  • 機能的価値
    • カスタマイズされたプログラム
    • 専門家による個別指導
    • 確実な結果へのコミットメント
  • 状況的価値
    • 駅近の便利なロケーション
    • 仕事帰りに通える時間帯
    • プライバシーへの配慮

3. 美容サロンの場合

スペシャルイベントビューティ「結婚式やパーティーで、最高の自分になりたい」「人生の特別な日をより輝かせる」

人生の特別な日に向けて、最高の自分を演出するトータルビューティサービス。評判の良いサロンで、結婚式やパーティーに向けた完璧な準備をサポート。フルコースの美容メニューで、かけがえのない一日への自信を提供します。

  • Why:人生の重要イベントで最高の自分に
  • When:イベントの1-2週間前
  • Where:評判の良いサロン
  • Who:花嫁、主役となる人
  • What:フルコースの美容メニュー

価値の3層構造

  • 感情的価値
    • 特別な日への期待感
    • 最高の自分になれる喜び
    • 周囲からの賞賛への期待
  • 機能的価値
    • プロフェッショナルな技術
    • トータルビューティケア
    • イベントに合わせた最適な提案
  • 状況的価値
    • イベント前の最適なタイミング
    • 信頼できる実績のあるサロン
    • きめ細かなカウンセリング

月一プレミアムケア:「忙しい中でも、月1回は自分にご褒美」

忙しい女性に向けた、月に一度の特別なご褒美時間。信頼できる行きつけサロンで、ヘアカットとトリートメントを通じて、美容維持と心のリフレッシュを同時に叶えます。

  • Why:自分へのご褒美、美容維持
  • When:月1回の休日
  • Where:行きつけのサロン
  • Who:美容意識の高い女性
  • What:ヘアカットとトリートメント

買う理由の整理

  • 定期的な美容管理
  • リラックスできる時間
  • 信頼できる技術

4. 飲食店の場合

ビジネスダイニング:「取引先との会食に、落ち着いた雰囲気で」

取引先との関係構築に最適な、落ち着いた雰囲気の空間。オフィス街の高級店で、厳選されたコース料理とワインを通じて、スムーズなコミュニケーションをサポートします。

  • Why:取引先との関係構築
  • When:平日昼間
  • Where:オフィス街の高級店
  • Who:ビジネスパーソンと取引先
  • What:コース料理とワイン

アニバーサリーダイニング:「大切な人と特別な時間を過ごせる場所」

大切な人との特別な記念日を彩る、雰囲気の良いレストラン体験。カップルや家族に向けた、思い出に残るアニバーサリーコースで、かけがえのない時間を演出します。

  • Why:特別な思い出作り
  • When:週末の夜
  • Where:雰囲気の良いレストラン
  • Who:カップル、家族
  • What:アニバーサリーコース

価値の3層構造

  • 感情的価値
    • 特別な日の思い出作り
    • 大切な人との絆の深まり
    • 非日常的な華やかさ
  • 機能的価値
    • 厳選された料理とワイン
    • 記念日向けの特別サービス
    • プロフェッショナルな接客
  • 状況的価値
    • 特別な日にふさわしい雰囲気
    • プライベートな空間確保
    • アクセスの良さ
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Hee

地方でWebディレクター。コンセプトメイキングや情報設計を含めて上流工程から制作業務に携わっています。コーポレートサイト、ECサイト、自治体サイト、ブランドサイト、グラフィックなど他ジャンルを経験。多いときには20案件をもつことも。デザインメンターでは複数のデザイナーに対するデザインディレクションの経験、ブランディング提案の経験から学んだことを発信しています。