新人デザイナーを教育するコツ【タイプ毎の教育/実体験】

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新人デザイナーって、どんなことに迷っている?

新人デザイナーが先輩デザイナーに相談する際の主な悩みには以下のようなものがあります

  • 自分の質問や悩みが「つまらない」「初歩的すぎる」と思ってしまい、相談をためらう。
  • 先輩の貴重な時間を奪ってしまうのではないかと心配する。
  • 自分の能力や作品が低く評価されるのではないかと怖い。
  • いつ、どのように相談を持ちかけるべきか迷う。
  • 自分の悩みや疑問を明確に言語化できず、何を聞くべきか整理できない。

新人デザイナーへ教育するコツ【実践ノウハウ】

心理的安全性=相談しやすい環境づくり

デザイナーが成長するためには、質問や相談をすることはとても重要。

でも僕の経験上、多くの新人デザイナーは、「こんな質門していいのかな?」「先輩は忙しそうだから、時間を奪うのは避けたほうがいいかも…」という理由で、相談自体を避ける傾向があります。

でも立ち止まって考えてほしいのは、相談しにくい雰囲気をつくっているのは「あなた」でもあります。

そこで重要となるのが「心理的安全性」、つまり相談しやすい環境づくりです。

心理的安全性とは、質問することへの抵抗感を減らし、自分の意見や質問を自由に表現できる雰囲気をつくってあげること。

例えば僕が意識していることとしては下記があります。

  • 「いつでも質問してください」とデザイナーに明確に伝えている。
  • 1日の間で質問のための「質問タイム」を設けている。
  • 「質問することは学ぶ姿勢の表れ」「どんな質問も成長につながる」という価値観を伝える。

こうした質門への抵抗感を減らしつつ、質問や相談のための時間を確保することで、ぐっと相談しやすい環境づくりにつながっていきます。

否定的な評価を避け、建設的なフィードバックを心がける

先輩デザイナーは経験がたくさんあるがゆえに、つい細かな点に目が行きがち。「これではダメだ」「全然理解していないね」という否定的な評価は、新人デザイナーを萎縮させてしまいます。

僕がフィードバックするうえで重要なのは、ちゃんと良い点をしっかりと認め、具体的に褒めた上で改善点を指摘すること。いわゆるポジティブフィードバックというやつです。

例えば「配色のバランスがとてもいいね」や「この装飾」

そして改善点を指摘する際は、単に「これが悪い」と言うのではなく、どうすればより良くなるかを具体的に示すことが重要。例えば、「このボタンの配置を画面右下に移動させると、ユーザーの操作性が向上するよ」というふうになぜこの改善がいいのか?と根拠を示してあげるようにします。

というのもデザインは「表現への理解」がとても重要であり、根拠を伝えてあげれば意図を理解しながらデザインできるようになるからです。

このような良い点を認めつつ、改善点も提示することで、バランスの取れたフィードバック=建設的なフィードバックをし、それを実践し、再度フィードバックを受けるというサイクルを繰り返すことで、着実にスキルアップしていくことができます。

全部教えない〜自主性の尊重〜

新人デザイナーを指導する際の重要なコツとして「全部教えない」という考え方があります。

なぜ全部教えないほうがいいかというと、「自身で考えるクセ」が身につかないからです。

ひとは甘えがちな動物ですから、常に答えを与えられると、自ら考えなくなって、常に指示を待つ姿勢が身についてしまいます。

実際、こういうデザイナーは結構して、自分のなかに答えがあるはずなのに、探す能力や癖がみについていないので、完全な他力思考になってしまっています。本人は層認めていなくても。

でも考えてみてください。そもそもデザインはクリエイティブな分野。あくまで自ら考え、試行錯誤するなかで独自の発想がうまれてきます。

だからこそ、教える側としては、全てを教え込むのではなく、ヒントとなるコメントを残したり、対話をしてあげたり、改善の方向性を示唆してあげて、新人デザイナー自ら考える余地をのこしてあげることで、自ら答えにたどり着くよう導いてあげるとよいです。

デザイン課題の実施

もしあなたの会社にデザイナーが複数人いて、チームとして動いているなら定期的に「デザインチャレジ」や「共有会」を開催するのもおすすめ。

デザイン課題とは、例えば定期的に小規模なデザイン課題を出題し、チーム全体で取り組みます。結果を共有し、互いにフィードバックを行うことで、質問や相談が自然に生まれる環境を作ります。

その他にもチームメンバーが自身の失敗経験とそこから学んだことを共有する機会を設けてあげるのもよいです。

個人のメンタルフォローも

新人デザイナーの指導は「技術的なスキル」だけでなく、精神的な面でも支えてあげるようにします。

指導をするうえで、デザイナーの「自信」をつけてあげることは大事。なぜなら、新人デザイナーの自己効力感を高めるからです。おすすめは小さな成功や進歩を積極的に認め、褒めてあげること。

例えば、1日の終りに話す機会をもうけてあげて、進捗だけでなく、「今日はどう?」「何か困っていることはある?」といった質問を日常的に投げかけてあげる感じです。

もしそこで何かに詰まっていたら、相談してくるでしょうし、そういった関係づくりが先程行った心理的安全性の確保におつながっていきます。

また仕事以外にちょっとランチをつきあってあげながら、仕事という関係から一歩外に出て、よりオープンな関係性をつくってあげると、より近しい存在として信頼してもらえることにもつながります。

【タイプ編】新人デザイナーの個人特性に合わせて教育するのが大事

これまでさまざまなコツをお伝えしてきましたが、僕の経験でとっても大事だと思ったことを伝えておきます。それは「教える」ときにやりがちなのは、デザイナー全員同じ方法で指導しようとすること。でもデザイナーは「デザイナー」という職ではあっても、彼らはそれぞれ異なるひとです。

実際、性格も違えば、強み・弱み、学習スタイルだってことなります。だからこそ僕が伝えておきたいのは、新人デザイナーごとに指導方法はカスタマイズしてあげたほうがいいです。

いくつかのタイプに分けてどういった指導方法がいいかを簡単にお伝えします。

言語化が得意なデザイナー

このタイプのデザイナーは自分の考えやデザイン要素を言葉で表現するのが上手です。(僕の知っているデザイナーのなかでも言語化が得意なのはほんとうに稀。だからとても貴重な人材です)

ですから彼らに対しては、クライアントや社内向けのプレゼンテーションを積極的に任せ、デザイン意図を言葉で説明する機会を増やしてあげるといいです。というのも社内メンバーに対しては説明ができても、社外の人(デザインの知識がない素人)に説明するのは苦手というデザイナーもいるからです。

こうしたプレゼンテーションを通じて、より自分のデザインに対して批評できるスキルがみについていくので、表現への自信がつくとともに、納得感のあるデザインをつくれるタイプのデザイナーになると思います。

あと言葉だけでなく、説明する際のビジュアル資料をつくる練習もしてあげると良いです。バランスの取れたプレゼンテーションスキルを育成します。

最終的には後輩への指導やアートディレクションというように統率していく人材にも育てていけると考えています。

自分の意見を強く主張していくるデザイナー

このタイプのデザイナーは自信を持って自分の意見を表明できますが、時として他者の意見を受け入れずに、我道をどんどん進んでいきます。

こうした自信はとても重要なのですが、それがほんとうにクライアントが求めていることなのか、ユーザー目線からはどうなのか、という点を冷静に伝えてあげたほうがいいです。

例えば、デザイン案を提示した際に、「このデザインはめちゃいいですね。〇〇の部分なんかは個性がでていて良かったと思います。でももし違う観点から見たら、どんな改善点が考えられますか?例えば〇〇という観点」また「このデザインに対して、ユーザーやクライアントからどんな反応が予想されますか?」といった質問を投げかけます。

また、複数人またがるようなデザインチームに積極的に参加させ、他のメンバーと協力して一つの成果物を作り上げる経験も良いと思います。(おそらくこうしたみんなで!系は嫌いなタイプかもしれませんが)

その過程で、「チームメンバーの意見をどのように取り入れたのか」「フィードバックを受ける前と後で、デザインにどのような変化がありましたか?」といった質問を通じて、協調していくことの大切さを伝えていくのもよいです。

なんでも鵜呑みにしてくるデザイナー

このタイプのデザイナーは言われたことを「そうですよね」「わかりました〜」とすぐに鵜呑みにするタイプ。ものを聞く態度としてはとてもいいのですが、デザイナーとしてはちゃんと自分の意見をもったデザインをしてもらいたいところ。

こうしタイプのデザイナーに対しては、質問を促す指導が良いと思います。例えば何か指導してあげて「いいですね」と思ったら、すぐに「なぜそう思う?」「他の方法は考えられる?」といった質問を積極的に投げかけてあげます。

こうしてあげることで「考える習慣」をつけさせるのです。

あるいはデザインの各要素について突っ込んであげてもいいです。というのもこうしたタイプは、なぜそのようにしたのかの理由を説明できないことが多いからです。

ですから言語化をする練習を繰り返してあげると成長につながっていきます。

デザイナーを教育する側は、つまりデザインメンターです。

最後に覚えておいてほしいことは、新人を教育する際、自身がメンターの役割を果たさなければならないということ。

メンターとして果たすべき役割は多岐にわたります。デザインスキルの指導(具体的なテクニックやツールの使用方法)だけではなく、クライアントへの対応方法、タイムマネジメントのコツ、ストレス管理、将来的なキャリアなどなど。

つまりデザイナーとして「デザインがうまい」だけではなだめなのです。あくまで教育する側は、各デザイナーの個性、学習スタイル、強み、弱みを深く理解し、より多くの視点から指導していく必要があるのです。そして常に学び、適応し、成長する姿勢を持ち続けることが、優れたメンターとしての基本姿勢となるでしょう。

ちなみにメンターはめちゃくちゃ難しいです。時間もかかる作業です。でも長期的に見たときに、個々のデザイナーの成長だけでなく、チーム全体の能力向上、そして組織全体のデザイン文化の発展につながっていきます。

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Hee

地方でWebディレクター。コンセプトメイキングや情報設計を含めて上流工程から制作業務に携わっています。コーポレートサイト、ECサイト、自治体サイト、ブランドサイト、グラフィックなど他ジャンルを経験。多いときには20案件をもつことも。デザインメンターでは複数のデザイナーに対するデザインディレクションの経験、ブランディング提案の経験から学んだことを発信しています。