機能デザインと装飾デザインの違いって?【美しく機能するデザインを】

  • デザイン

前提としてデザインは「使ってもらう」を意識して

デザインの根幹は、ユーザーに「使ってもらうこと」です。この原則は、Webデザイン、パンフレット、パッケージデザインなど、あらゆるデザイン分野で普遍的に適用されます。

したがって、デザインは常にユーザー視点で考える必要があります。ユーザーが求める情報や達成したい目標を常に意識し、それらを実現するデザインを目指すべきです。

決して単なる美的表現(視覚的にかっいい、かわいい)ではありません。美しさや独創性も、この文脈の中で評価されるべきです。

  • Webサイト:閲覧のしやすさと操作性
  • パンフレット:効果的な情報伝達
  • パッケージデザイン:製品の魅力を引き出し、購買意欲を刺激

このように各媒体や目的に応じた「使われ方」を意識することが重要です。

機能かor装飾か。

デザインの役割には「機能」と「装飾」の2パターンがあるといったのは、水野学さん。

装飾に走りすぎて使いにくくなることは本末転倒。一方で、機能性だけを追求すればよいわけでもありません。見た目の美しさは、ユーザーの感情に訴えかけ、製品やサービスへの愛着を生み出す重要な要素だから。

デザイナーは、機能性と美しさどちらも意識しながら、常にエンドユーザーの視点に立ち、実際の使用場面でデザインがどのように機能するかを想像し、検証する必要があります。

機能デザインとは?

機能デザインとは、使いやすさ、読みやすさ、情報の探しやすさなど、情報をいかに理解しやすくするかを追求することです。

デザインは実際に使用して満足できるものでなければ意味がないです。

ですからデザイナーはユーザーの認知プロセスや行動パターンを深く理解し、それに基づいたインターフェースや情報構造を設計する必要があります。

例えば、重要な情報を適切に強調したり、論理的な情報の階層を構築したり。ユーザーが直感的に操作し、必要な情報に迅速にアクセスできる工夫が必要です。

また、テキストの読みやすさを踏まえてタイポグラフィの選定、あるいは、情報のグルーピングも、機能デザインとして重要な役割となります。

例えばパンフレットの場合、パンフレットの目的や対象読者に基づいて、どの情報を目立たせるべきかを決定します。例えば下記の観点があります。

  • どちらのレイアウトがテキストをより読みやすくなるか(読みやすさ)
  • どちらが重要な情報をより効果的に強調できるか(情報の階層)
  • フォーマルさや親しみやすさなど、伝えたい印象に合うか(パンフレットの意図やトーン)
  • テキスト量や画像の配置などに適しているか( コンテンツの量と種類:)

装飾デザインとは?

装飾デザインは、色彩、形状、テクスチャ、パターン、素材の選択など、視覚的な美しさと感性的な訴求力を

  1. 色彩:特定の感情や雰囲気を喚起し、ブランドアイデンティティを強化します。
  2. 形状:製品や空間に独自性を与え、視覚的な興味を引き起こします。
  3. テクスチャ:触覚的な印象を視覚的に表現し、豊かな感覚体験を提供します。
  4. パターン:リズムと一貫性を生み出し、視覚的な楽しさを添えます。
  5. 素材:高級感や親しみやすさなど、特定の印象を強調します。

様々な要素を巧みに組み合わせて行われます。

機能デザインと装飾デザインどちらが大切?

そもそも、この問い自体がNG。機能デザインと装飾デザインは対立するものではありません。むしろ、優れたデザインは両者が調和したときに生まれます。

ディーター・ラムスのデザイン哲学に「その製品は機能面だけでなく、心理的、美的な面においても、一定の基準を満たしていなければならない。良いデザインとは、不要なものを可能な限り削ぎ落とし、実用性を最も重視したものだ。」

機能性と装飾性のバランスを考え、両者を統合していくことで、視覚的な魅力だけではなく使いやすさも兼ね備えたデザインとなります。つまり単に機能だけを考えれば良いわけではなく、むしろ美しさを追求する努力は不可欠です。

大事!目指すのは「美しく機能する」

僕にとって、デザインは「美しく機能する」ことを目指すべきだと考えています。なぜなら、「装飾=美しさ」と「機能性」は全く離れた別々の要素ではなく、一体として捉えるべきだからです。

目指すべきは、美しさが機能を高め、機能が美しさを生み出す相互補完的な関係です。「どう機能するのか?」を徹底的に考え抜くことで、実用的な問題解決だけでなく、「本質的な美しさ」も生まれてくるのです。

シンプル美

例えば、「使いやすい機能」について深く考えていくならば、不要な要素は自然と取り除かれていきますよね。そうすると結果的には生まれるのは、余分な装飾や複雑が排除された本質的な要素のみが引き立つ「シンプル美」です。

そして、それ自体がなんとも言えない一種の「美しさ」となります。(少数の要素で全体のバランスを取っている、対象の核心的な機能や目的に焦点があたって本質に焦点が当たっている)

また余分なものを削ぎ落とした結果、時代や文化を超えた普遍的な価値が生まれます。これは、長期的に通用するデザインや、世代を超えて読み継がれる文学作品につながります。

例えば、小説家ヘミングウェイの文体は、短文で直接的な感情表現を排除し、装飾を最小限に抑えています。しかし、そのシンプルさゆえに読者の心に強い感情を呼び起こすことができるのです。ですから、デザインでは使う喜びを、文学では読者の心に深い余韻を残すわけです。

check!シンプル美の特徴:

  • 少数の要素で全体のバランスを取る
  • 対象の核心的な機能や目的に焦点を当てる
  • 時代や文化を超えた普遍的な価値を持つ

空虚なデザイン

反対にあまりにも要素を取り除きすぎて過度に簡素化されたデザインは「シンプル美」ではなく、「空虚」や「無個性」です。

空虚なデザインとは、表面的な簡素化によって本質的な価値を失ったデザインアプローチを指します。明確な目的や深い考察なしに要素を削除することで、結果的に意味と機能の両方を損なってしまいます。

空虚なデザインとは例えば下記の特徴です。

  • 内容の希薄さ: 重要な情報や機能の欠如。残された要素間の関係性が希薄で、全体としての調和を欠いています。
  • 過度の単純化: 複雑さを避けるあまり、必要な情報や要素まで削除してしまっています。
  • コンテキストの欠如: デザインの背景や目的が不明確で、なぜそのデザインが選択されたのかの理由が見えません。
  • 機能性の低下: 必要な機能を適切に提供できないことが多く、ユーザビリティの観点からも問題があります。
  • 没個性: 独自性や特徴が失われ、他のデザインと区別がつきにくくなります。

こうした空虚なデザインの特徴の反対を追求していくことで、デザインが理想に繋がっていきます。

  • 内容の充実性:重要な情報や機能を適切に含む。要素間の関係性が明確で、全体として調和がとれている各要素が明確な目的を持ち、全体としての一貫性がある適切な
  • 複雑さの維持:単純すぎず複雑すぎない、適度なバランスを保つ。ユーザーの認知負荷を考慮しつつ、必要な深さと広がりを持たせる
  • 明確なコンテキスト:デザインの背景や目的が明確に伝わる:なぜそのデザインが選択されたかの理由が理解できる。ブランドや製品の価値観、ストーリーが視覚的に表現されている
  • 高い機能性:必要な機能を適切かつ効率的に提供する。ユーザビリティが高く、直感的に操作できる。ユーザーの目的達成をスムーズにサポートする
  • 個性→独自性:他のデザインと明確に区別できる特徴を持つ。ブランドや製品の独自性が視覚的に表現されている。創造性と革新性が感じられる

美しく機能するWebデザインとは?

僕はWebディレクターなので、美しく機能するWebデザインを考えています。

少なくとも以下の要素は必要です。

  1. 直感的なナビゲーション: ユーザーが迷うことなく目的の情報にアクセスできるよう、明確で論理的な構造を持ちます。この構造自体が視覚的な美しさを生み出します。
  2. レスポンシブデザイン: 様々なデバイスやスクリーンサイズに適応し、常に最適な表示と機能性を提供します。この柔軟性自体が一種の美しさとなります。
  3. 適切な余白とレイアウト: コンテンツ間の適切な余白や整理されたレイアウトは、読みやすさを向上させるだけでなく、視覚的な快適さももたらします。
  4. タイポグラフィの最適化: 読みやすくエレガントなフォントの選択と適切なサイズ設定は、機能性と美しさの両立を実現します。
  5. カラーパレットの戦略的使用: ブランドアイデンティティを反映しつつ、コントラストを適切に設定することで、視認性と美的魅力を両立させます。
  6. 高速ローディング: 最適化された画像やコードにより、ページの読み込み速度を向上。この「軽快さ」自体が美しさの一部となります。
  7. アクセシビリティへの配慮: 様々なユーザーのニーズに対応することで、包括的な美しさを実現します。
  8. マイクロインタラクション: 小さな動きや反応が、ユーザー体験を豊かにし、同時に機能の理解を促進します。
  9. コンテンツファースト: コンテンツを中心に据え、それを最も効果的に表現するデザインを構築します。これにより、形式と内容の美しい調和が生まれます。
  10. 一貫性のあるデザイン言語: 全ページを通じて一貫したデザイン要素を使用することで、ユーザビリティと視覚的な統一感を同時に実現します。
  11. パフォーマンスの最適化: サイトの速度と反応性を高めることで、ユーザー体験を向上させます。この「スムーズさ」も美しさの一形態です。
  12. コンテキストに応じた適応: ユーザーの行動や好みに応じて内容や表示を最適化する機能は、個別化された美しさを生み出します。
  13. セキュリティとプライバシーへの配慮: ユーザーデータの保護も、信頼性という形で美しさに寄与します。

美しく機能するWebデザインとは、視覚的な魅力と使いやすさを高次元で融合させたデザインアプローチです。このコンセプトをWebデザインに適用すると、以下のような特徴と原則が浮かび上がります:

デザインとは論理の積み重ね=センスではない。

ちなみにデザインはいまだにセンスと思われがちですがそうではありません。

デザインセンスと呼ばれるものは、実際には長年の経験と学習を通じて自分のなかにノウハウとして培われた判断力です。だからこそ、クライアントの依頼や制作物の種類といった目的や状況に応じて「適切」な判断を下す能力となって現れます。

例えば、特定のターゲット層に対してどのような視覚言語が効果的か、どのような情報構造が最も理解されやすいか、あるいはブランドの価値をどのように視覚的に表現するかなどを、瞬時に判断し実行に移すことができるようになります。

つまり、デザインの本質は、個人の美的感覚だけではなく、むしろ経験と知識の蓄積、そして論理的思考に基づく問題解決能力にあるわけです。

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Hee

地方でWebディレクター。コンセプトメイキングや情報設計を含めて上流工程から制作業務に携わっています。コーポレートサイト、ECサイト、自治体サイト、ブランドサイト、グラフィックなど他ジャンルを経験。多いときには20案件をもつことも。デザインメンターでは複数のデザイナーに対するデザインディレクションの経験、ブランディング提案の経験から学んだことを発信しています。