デザインは「ヒアリング」が重要という話
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今日は「ヒアリング」について、誰でも実践できる準備のコツをお伝えしていきますね。
目次
準備不足という落とし穴
「お客様の話を聞くだけだから」この安易な考えが僕の印象に残る失敗を引き起こすことになりました。
僕の実体験です。ある家具メーカーのWebサイト制作プロジェクト。
会議室に入り、担当者と挨拶を交わしたその時です。突然、会社の社長が現れました。当初は社長にヒアリングするわけではなく、サイト制作の担当者と話し合う予定でした。
でも業界を知り尽くした経営者が、目の前に座ったのです。その瞬間、私の中で凍りついたような感覚に襲われて「この方に、どんな質問をすればいいんだろう?」その思いが、私の頭を支配しました。
家具業界のことも、会社の歴史も、社長の経営哲学も、何も知らない。準備不足という現実が、重たい現実としてのしかかってきました。
質問をしようとしても、言葉が出てきません。出てくるのは表面的な質問ばかり。「どんなデザインがお好みですか?」「参考にしたいサイトはありますか?」…今思い返しても、冷や汗が出てきます。。
幸いにも、同席していた上司が状況を察知し、専門的な質問で話を展開してくれました。しかし、これは純粋に運が良かっただけです。
準備不足が招いた恐ろしい失敗体験です。
ヒアリングの成功は、仮説を持って臨むこと
この失敗から、私は重要な教訓を学びました。ヒアリングの成功は、その場の会話力だけでは決して成し得ないということです。
必要なのは、
- クライアントの業界に関する深い理解
- 会社の歴史や理念の把握
- 経営者の考え方や方針の研究
- 競合他社との比較研究
こうした事前準備です。
そして、できるデザイナーやディレクターは、ヒアリング前から必ず「仮説」を持って臨んでいます。
私の経験からいえるのはヒアリングとは、自分の立てた仮説の答え合わせの場であるということです。
仮説とは、ただの思いつきや憶測ではなく、徹底的な事前リサーチと分析を通じてうまれてきます。
仮説がもたらす3つの価値
01.質問の質があがる
まず、的確な質問を投げかけることが可能になります。なぜなら、企業の状況や課題についての深い理解があるからこそ、本質的な問いを立てられるのです。例えば「デザインはどのようなものがお好みですか」という表面的な質問ではなく、「技術力の高さをWebサイトでどのように表現していきたいとお考えですか」といった、クライアントの本質に迫る質問が可能になります。
02.文脈の理解
文脈を理解した応答ができるようになります。クライアントの言葉の背景にある意味を素早く理解し、適切な返答や提案ができるのです。例えば「シンプルなデザインが良い」という言葉の裏に、「誇張を避けたい企業文化」や「特定のターゲットへの訴求」といった真意を読み取ることができます。
03.新たな気づきを与えられる
事前準備として仮説をもっておくことによって、より深い対話ができます。それによってクライアント自身も気づいていなかった課題や可能性を見出すことができます。
デザインヒアリングの大切なポイント
01.WHYを見出すことの重要性
デザインの世界では、多くの人が「見た目」や「制作方法」に意識を向けがちです。しかし、真に価値のあるデザインは、その根本にある「なぜ」という問いから生まれます。このWHYを見出す最も重要な機会が、実はヒアリングなのです。
多くのデザイナーは、つい「どんなデザインにするか」という具体的な表現方法や、「どうやって作るか」という技術的な側面に目が行きがちです。しかし、そこに至る前の「なぜ」を深く理解することこそが、期待を超えるデザインを生み出す鍵となります。
例えば、「サイトをリニューアルしたい」という一般的な依頼を考えてみましょう。表面的には「古くなったから」「競合がリニューアルしたから」という理由が語られます。しかし、その言葉の奥には、実は「若手採用の強化」「新規事業への参入」「企業文化の変革」といった本質的な課題が隠されているのです。したから」という理由かもしれません。でも、丁寧に対話を重ねていくと、そこには「若手採用の強
02.信用ならない、クライアントの声
ここで重要なのは、クライアントの言葉をただ鵜呑みにしないことです。なぜなら、クライアントの話は必ずしも整理された状態で語られるわけではないからです。多くの場合、それは断片的で、時には支離滅裂な説明になることもあります。
思いついたことをそのまま言葉にする、頭の中の雑多な考えを順不同で話す、あるいは本質的な課題が言語化されていない状態で話が始まることも珍しくありません。このような状況で、表面的な要望だけを書き留めていては、真の課題解決には至れません。
私たちデザイナーの役割は、単に話を聞き取ることではありません。断片的に語られる情報を整理し、その背後にある本質的な課題を見出すことにあります。それは時として、クライアント自身も明確に認識していない課題かもしれません。
このプロセスは、まるでパズルのピースを組み合わせるような作業です。断片的な情報の一つ一つを丁寧に拾い上げ、それらを論理的に組み立て、全体像を把握していく。そうすることで初めて、クライアントが本当に必要としているソリューションが見えてくるのです。