MVP(Minimum Viable Product)とは?MVPのつくりかたは?

  • デザイン

「MVP(Minimum Viable Product)」は、ビジュアルコミュニケーションのプロフェッショナルであるデザイナーにとって、ユーザー体験を最適化し、最小限のリソースと時間を使って最大の学びを得る方法として重要です。

この記事では、MVPの概念とその構築方法を、デザインの視点を交えながら掘り下げていきます。

MVP(Minimum Viable Product)とは?

MVP(Minimum Viable Product)とは、その名の通りMVPは、製品が市場に持っている基本的な価値仮説をテストするための、最小限の機能を持つ製品バージョンのこと。

製品開発の初期段階で、最も基本的かつ核となる機能だけを持ったMVPを市場に投入することで、リアルタイムでユーザーのフィードバックを得ることができ、そのフィードバックをもとに製品を改善していくことが可能になります。もしMVPが市場で良い反応を得られなかった場合、開発チームは初期の段階でそれを知ることができ、大規模なリソースの浪費を防ぐことができます。

例えば、かつてFacebookが最初にリリースしたプロダクトは、現在の多機能なプラットフォームとは比べ物にならないほどシンプルなものでした。しかし、そのシンプルなプラットフォームを通じてユーザーからのデータやフィードバックを収集し、製品を洗練させていきました。このアプローチにより、企業は大規模な投資やリソースを用いる前に、製品の市場で受け入れられる可能性(ポテンシャル)をある程度、市場に投入する前に把握することができるわけです。

MVP(Minimum Viable Product)を作るのはどんな人におすすめか?

具体的にMVPをするのをお勧めする人をお伝えします

プロダクトマネージャー

  • 新しい機能やアップデートをリリースする前に、ユーザーからのフィードバックを得たい。
  • ユーザーが実際にどの機能を使用し、どの機能が価値を提供しているのかを理解したい。

デザイナー(グラフィックデザイナー、WEBデザイナー、アプリデザイナー)

  • ビジュアルコンセプトがユーザーにどのように受け入れられるかを早期に把握した
  • ユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンスを最適化するための実際のユーザーデータを得たい。
  • ブランドのビジュアル要素(ロゴ、カラースキームなど)がターゲットにどれほど刺さるかを検証したい

マーケッター

  • 新しいキャンペーンやプロモーションの効果をテストしたい。
  • ターゲットオーディエンスが製品にどのように反応するかを早い段階で把握し、マーケティング戦略を調整したい。

スタートアップオーナーや起業家

  • 新しい製品やサービスを市場に投入する前に、最小限の機能を持つ製品を通じて顧客の反応をテストしたい。
  • リソース(時間、お金、人材)が限られている中で、最も効果的な方法で製品を市場に投入したい。

イノベーションを推進する企業リーダー

  • 新しいアイデアやイノベーションをリスクを最小限に抑えながらテストしたい。
  • チームや部門を通じてイノベーションカルチャーを促進したい。

なぜMVP(Minimum Viable Product)が大切なのか?​

そもそもどうしてMVPが重要なのでしょうか?ここでは重要な理由を下記で説明します。

1. リスクの最小化

製品開発はコストと時間がかかります。MVPを用いることで、全ての機能を持つ完成品を市場に投入する前に、最小限のリソース(つまり不必要な機能に無駄なコストをかける前に)で市場の反応をテストできます。これにより、もし製品が市場に受け入れられなかった場合でも、損失を最小限に抑えることができます。

2. 早期のフィードバック

MVPは、ユーザーから早期にフィードバックを得る手段として極めて有効です。この段階で収集できるユーザーからの生の声は、製品の方向性を正しく調整し、ユーザーのニーズに適した製品を開発するうえで不可欠です。

3. ユーザーのニーズの理解

MVPを市場に投入することで、実際のユーザーが製品をどのように使用するのか、どの機能が価値を提供しているのかを観察することができます。ここ理解することは、製品が市場のニーズにどれだけフィットしているのかを評価し、あとで説明するPMF(Product-Market Fit)に近づくための改善点を見つける手がかりとなります。

4. 市場の動向の把握

MVPを通じて市場の動向やトレンドを把握することができます。それを製品開発にフィードバックすることで、市場と製品の適合度を高めることができます。これは、製品が市場にフィットし、PMFを達成する上で極めて重要です。

5. スケールのタイミング

MVPとそのフィードバックをもとに製品を改善し、市場での反応が良ければ、次なるステップとして製品をスケールアップします。PMFが達成されたと感じるタイミングで、より多くのリソースを投入し、製品を拡大していくことができます。

MVPはデザインにおいて重要か?

ここではグラフィックデザイナー、WEBデザイナー、アプリデザイナーといったビジュアルデザインの専門家においてMVPはどう重要かを説明します。

MVP(Minimum Viable Product)のアプローチは、Webデザイン・ホームページの開発においても非常に有効です。特に新しいWebサイトやアプリをローンチする際、ユーザーの反応やニーズを早い段階で把握し、それに基づいて改善を行うことは、リソースを効率的に使用し、成功に繋がる可能性を高めます。

以下で、僕が考える「デザインでどうやってMVPを実現するか」についてまとめます。

1. ユーザーエクスペリエンス(UX)のテスト

MVPという形でWebサイトをローンチすることで、初期段階でユーザーエクスペリエンスをテストすることができます。そうするとユーザビリティの問題や改善点を早くから把握することができます。これにより、ユーザーがウェブサイトをどのように利用しているのか、どの部分が使いにくいのかを理解し、改善していくことができます。

2. コンテンツの最適化

ホームページのコンテンツをMVPとして見せていき方法です。ユーザーからのフィードバックやアクセスデータを基に、コンテンツの最適化を行います。具体的にはコンテンツの中でがユーザーがどこに注目したのか、どのページが最も訪れられているのかを分析し、コンテンツ戦略を調整します。

3. デザイン要素の検証

MVPを通じて、ウェブサイトのデザイン要素(色、フォント、レイアウトなど)がユーザーにどれほど効果的であるかをテストします。A/Bテストなどを利用して、どのデザインがユーザーのエンゲージメントやコンバージョンに寄与しているのかを検証し、デザインを最適化します。

4. テクニカルな問題の特定

ホームページのMVPをローンチすることで、テクニカルな問題(ローディング時間、モバイルレスポンシブネスなど)を早期に特定し、修正することができます。これにより、公開初期からユーザーに快適な体験を提供することができます。

プロトタイプとMVP(Minimum Viable Product)の違い

プロトタイプとMVPは、混同されることがあります。でも両者の間には明確な違いが存在するのでちゃんと把握しておきましょう。

まずプロトタイプは、製品のアイデアやコンセプトを具現化した初期モデルであり、内部のテストやデモンストレーションを目的として作成されることが多いです。

一方で、MVPは市場に投入され、エンドユーザーから直接フィードバックを得ることを目的としています。

例を挙げると、自動車開発におけるクレイモデルがプロトタイプであり、限定的な機能を持った初期モデルが市場に投入されるケースがMVPと言えるでしょう。この違いを理解すれば、製品開発の各フェーズで適切なアプローチを選定する上で極めて重要となります。

MVPの作り方・全体の流れを伝授!ステップで覚えておこう

ステップ1:アイデアの洗練と検証

まず始めに、製品のアイデアを具体的かつ明確に定義します。この段階では、解決すべき具体的な問題とターゲットとするユーザーを明確に特定することが大事です。その後、アイデアが実際に価値をもたらすものであるかを検証するため、市場調査やユーザーインタビューを計画的に実施します。

ステップ2:製品の“コア”となる機能を決定

製品のコアとなる機能を特定します。これは、ユーザーに最も価値を提供する基本的な機能と考えていいです。このステップで重要なのは、製品が持つべき最小限の特徴を明確にし、余計な機能はできる限り排除していくことにあります。

ステップ3:試作品(プロトタイプ)の作成と評価

特定したコアとなる機能を基に、早速プロトタイプを開発します。この段階では、製品の基本的なフレームワークを作成し、コア機能が正しく動作することを確認します。さらに、初期のユーザーテストを実施して、デザインや使いやすさについてのフィードバックをもらいましょう。

ステップ4:MVPのローンチとフィードバック収集

プロトタイプが確立したら、MVPをターゲットユーザーに向けてローンチします。ここでは、製品を実際のユーザーに使ってもらい、どう感じたかやどう使ったかの意見やデータを集めます。さらにユーザー行動のデータも積極的に収集するといいです。

ステップ5:フィードバックの分析と製品の改善

ユーザーから得られた意見やデータを分析し、製品をどう良くするか改善点を考えます。そして、そのフィードバックをもとに製品を改善し、再度テストを行います。この改善プロセスは、ユーザーのニーズにどれだけ応えられているかを評価する重要なステップです。

ステップ6:繰り返して改善する

ステップ4とステップ5を何度も繰り返し、製品を継続的に改善していきます。お客様のニーズや市場の動きが変わることもあるので、常に意見を注視し、製品を更新していくことが大切です。このプロセスを通じて、最初のバージョンの製品はお客様のニーズに合った形にどんどんと変わっていきます。そして、MVPがもしもユーザーから受け入れられたら、さらなる機能の追加やスケールアップを図っていくことができます。

PMF(Product-Market Fit)との関係から考えるMVP

スタートアップや新しいプロジェクトを立ち上げる際、製品が市場に適合しているかどうかを評価する指標として「PMF(Product-Market Fit)」があります。

PMF(Product-Market Fit)とは、製品が特定の市場セグメントにおいて、その市場のニーズを適切に満たし、顧客から十分な需要を引き出せる状態を指します。言い換えれば、製品が市場と「フィット」している、つまり市場の要求に適切に応えている状態をPMFと言います。

一方で、これまで製品開発の初期段階で市場の反応をテストする手法が「MVP(Minimum Viable Product)」でした。

実はこの二つは非常に密接した概念です。なぜならMVPは結局、「PMFの状態」を目指すために作られるためです。

つまりMVPを用いて製品開発の初期段階で市場の反応をテストし、そのフィードバックをもとに製品を改善・進化させることは、製品が市場に適合し、持続可能な成長を遂げる状態、すなわち「PMFを達成する」ことを最終目的としているわけです。

PMFを達成することは、消費者の明確なニーズを満たし、十分な需要を引き出せる状態にあるというわけですから、持続可能な成長を遂げることができるポイントを見つけることを意味します。

要はPMFは「MVPの段階で想定していた価値仮説が正しかったかどうかを確認する指標」ともなり、その指標が正しい状態を示した場合(MVP→PMF達成)、企業は製品をさらにスケールアップし、持続可能な成長に繋げていけばいいわけです。

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Hee

地方でWebディレクター。コンセプトメイキングや情報設計を含めて上流工程から制作業務に携わっています。コーポレートサイト、ECサイト、自治体サイト、ブランドサイト、グラフィックなど他ジャンルを経験。多いときには20案件をもつことも。デザインメンターでは複数のデザイナーに対するデザインディレクションの経験、ブランディング提案の経験から学んだことを発信しています。