写真加工・レタッチこそ、デザイナーの腕の見せ所【デザインスキル編】

  • デザイン

写真や画像はデザインに欠かせない重要な要素。でも写真をそのままデザインに使用しても、うまく調和しないことがあります。写真の持つ可能性を最大限に引き出し、デザインに自然に溶け込ませるためには、適切な写真加工・レタッチが不可欠です。

本記事では、デザイナーの腕の見せ所である写真加工・レタッチのテクニックを、デザインスキル向上の観点からご紹介します。色調補正、肌の修正、不要物の除去など、レタッチ技術を習得することで、デザインはさらに磨きがかかること間違いなし。デザインのクオリティを上げるための写真加工・レタッチの極意を、ぜひマスターしてください。

そもそもレタッチとは?

レタッチってなんぞや?という人へ。レタッチは撮影した写真や画像を修正・加工すること。主にPhotoshopやLightroomといったデジタル画像編集ソフトを使用して輝度、ホワイトバランス、コントラスト、彩度などを調整します。

レタッチと聞けば、「画像を美しく見せることでしょ?」と考えている人が多いと思います。でも僕はそれ以上にもっと大切な目的があると考えています。

それは「頭の中にあるイメージを現実のものにする」こと。つまりレタッチはデザイナーのアイデア(=〇〇したい)を、自由に表現するのに必要な技術なのです。

実際、レタッチを使いこなせば、撮影写真だけでなくクライアントからもらった古い画像だって、デザイナーが伝えたい目的や意図に合わせて、大胆にかつ具体的な表現へと磨き上げることもできます。

例えば、食べ物ひとつとっても、「パンのサクサク感、フルーツの瑞々しさ、肉の柔らかさ」それぞれ表現をしたいコンセプトがあると思います。

そのためにレタッチを使って食材の色を鮮やかにしたり、器とのコントラストを際立たせたり・・・と調整をかけていくことで、自分の表現したいコンセプトを明確に相手に伝えられます。

その他にも、

  • 職人さんの渋さをもっと強調させたい→ハイコントラストにして明暗の差を強調し、職人さんの顔のシワや手の質感などを際立たせる
  • 低解像度な写真もある程度まで品質を向上させたい→AIを活用したアップスケーリング機能を使って画像のサイズを拡大し、ノイズ除去やシャープネスの調整を行うことで、できる限り品質を改善する
  • モデルさんの肌を美しくみせたい→肌の質感を整えるためにハイライトや影を調整し、シミやシワ、くすみなどを除去することで、なめらかで美しい肌に仕上げる。
  • 紅葉の赤、夕暮れ感を演出したい→色調補正を行って、赤やオレンジなどの色を強調し、コントラストを調整することで、印象的な秋の風景を表現。

というふうに、「〇〇したい」というデザイナーが抱く表現の目的があり、それを実現する手段としてレタッチを用いるのです。

レタッチに関する2つのマスト知識

デジタル画像編集ソフトとは?

デジタル画像編集ソフトとは、コンピュータ上でデジタル画像を編集、加工、作成するためのソフトウェアです。代表的なデジタル画像編集ソフトの例は以下の通り。

  1. Adobe Photoshop:どんな画像加工に使用される業界標準かつ安定の編集ソフト。高度な編集機能、レイヤーによる編集、複雑な合成、さまざまなフィルターとエフェクトが特徴。
  2. Adobe Lightroom: 写真の整理、編集、共有を行うためのソフトウェア。特に写真のバッチ編集やカラーコレクションに優れています。
  3. GIMP (GNU Image Manipulation Program): フリーかつオープンソースの画像編集ソフトウェアで、多くのプロフェッショナルな機能を提供しています。
  4. Corel PaintShop Pro: 写真の編集とグラフィックデザインの機能を備えた、コストパフォーマンスに優れたソフトウェア。
  5. Pixlr: ブラウザ上で動作するオンラインの画像編集ツールです。インストール不要で、手軽に利用できます。

僕はこのなかでもPhotoshopとLightroomを使っています。各々の使い分けとして

  • Photoshop→どんな加工もとりあえずできる。だから高度なレタッチや合成作業にはPhotoshopを使用する。(合成やいらないものの除去、レイヤー・マスク機能を使って、画像の特定の部分を選択して編集可能)
  • Lightroom→写真管理(大量の写真を効率的に管理、整理)とRAW現像に特化したソフト。簡単な画像加工くらいに使用。高度な合成やレイヤー機能Photoshopほど充実していない。

ちなみにLightroomとPhotoshopは連携して使用できます。だからLightroomで現像した画像をPhotoshopに送って編集すれば効率的に作業することも可能です。

RAW現像とは?

RAW現像とは、一眼レフなどデジタルカメラで撮影したRAWデータを現像し、画像ファイル(JPEG、TIFFなど)に変換するプロセスです。

ちなみにレタッチをするときにはRAWデータを使用したほうがいいです。

なぜなら、画像に対する調整の自由度がはるかに高いからです。ホワイトバランス、露出、コントラスト、色調など、JPEGと比べてはるかに広い範囲で調整できます。

JPEGの場合はカメラの中で現像処理が行われてしまいます。

デザイン時になぜレタッチ技術が役立つのか?

表現の幅を広げる

レタッチによって、現実には存在しないようなビジュアルを作り出せます。フォトモンタージュやシュールな表現など、デザイナーの創造力をいかんなく発揮できます。

表現の可能性を広げ、独自の世界観を構築する上で、重要なスキルだと考えられます。

さらにディティールにもこだわれる

デザインのクオリティを左右するのは、ディテールへのこだわり。レタッチによって、画像の細部を磨き上げ、より洗練された印象に仕上げることができます。デザイナーの意図を正確に表現し、完成度の高い作品を生み出すために、レタッチ技術は欠かせません。

時間と手間の節約にもなるよ

完璧な写真を最初から撮影することは難しい。天気の条件や映り込みなど撮影現場はリアルなものですから、タイミングによってどうしても理想の形で撮影できないこともあります。とはいえ、撮り直しとなると時間もコストもかかってきます。そんなとき、レタッチを活用すれば思い描いていた写真へとサクッと編集できます。つまり限られたリソースの中で、最大限の理想に近づけていくために、レタッチ技術は不可欠なのです。

レタッチで覚えておくべきこと

雰囲気を決めること

写真をレタッチせずデザインに使ってしまうと、全体の雰囲気になじまない、浮いた印象になってしまうことがあります。ポイントは、色調、明るさ、質感の3つを、デザインに合わせて調整することです。

まず色調については、デザインの色調に写真を近づけることが大切です。例えば、デザインが暖色系の場合は写真も暖色系に、寒色系の場合は写真も寒色系に調整します。このように色調を統一することで、全体の調和を図ることができます。

次に明るさですが、これもデザインに合わせることが重要です。特に、背景が明るいデザインに暗めの写真を使用すると、そのアンバランスが目立ってしまいます。写真の明るさをデザインに近づけることで、違和感を防ぐことができます。

最後に質感にも注意が必要です。写真の質感(粗さ、ノイズ、ボケなど)がデザインの他の要素と大きく異なると、浮いた印象になってしまいます。例えば、シャープでクリーンなデザインに、ザラついたテクスチャの写真を使うと、統一感が損なわれてしまいます。

写真の質感もデザインに合わせて調整し、全体の一体感を出すことが大切なのです。

明るくしすぎない

写真のレタッチにおいて、初心者がよく陥る失敗の一つが、写真を明るくしすぎてしまうことです。とはいえ、暗いままの写真は美しくないので、写真を明るくするコツを伝えておきます。

例えば暗めに撮った写真を明るくしたい場合、写真の一番明るい部分を基準に露光量をあげていくといいです。白飛びを防げます。(白飛びが起こると、その部分のディテールが失われてしまう)。また暗部と明部のバランスを意識することも大切です。つまり明部を適切な明るさにしたなら、「暗部」も少し持ち上げることで全体のバランスを整えます。

レタッチ基本テクニック7選

色調補正

色調補正で写真の色味を最適化 色調補正は、レタッチの基本中の基本。明るさ、コントラスト、彩度、ホワイトバランスなどを調整することで、写真の色味を最適な状態に整えます。全体的な印象を大きく左右するこの工程は、レタッチの中でも特に重要です。

肌の修正

肌の修正でモデルの肌をなめらかに 人物写真では、肌の状態が写真の良し悪しを決めると言っても過言ではありません。シミ、シワ、くすみなどを丁寧に除去し、なめらかで美しい肌に仕上げることで、モデルの魅力を最大限に引き出すことができます。

不要物の除去

不要物の除去で写真をすっきりと 写真には、ゴミ、傷、余分な物体など、不要な要素が写り込んでしまうことがあります。これらを丁寧に除去することで、写真をすっきりとさせ、被写体にフォーカスを当てることができます。

合成で新しいシーンを創造

複数の写真を組み合わせることで、現実には存在しないような、新しいシーンを創り出すことができます。空や背景を差し替えたり、別の場所で撮影した被写体を追加したりと、合成の技術を使えば、表現の幅が大きく広がります。

背景の置き換えで被写体の印象を変える

背景は、被写体の印象を大きく左右します。背景を別の画像に差し替えることで、被写体の雰囲気を自在に変えることができます。例えば、スタジオで撮影した人物の背景を、海や山に差し替えることで、まるで現地で撮影したかのような写真に仕上げることができます。

ディテールの強調で質感や立体感を引き出す

写真の質感や立体感は、ハイライトや影の表現によって大きく変わります。これらを適切に調整することで、被写体のディテールを強調し、よりリアルな表現を可能にします。特に、製品写真などではこの技術が重要になります。

リサイズ・トリミングで構図を最適化

写真のサイズや構図は、見る人の印象を大きく左右します。リサイズやトリミングの技術を使うことで、写真のバランスを整え、より魅力的な構図を作り出すことができます。

レタッチ技術があれば、こんなことができる

何十年も前の写真を使ってと言われた・・・

古い写真や低解像度の画像で、デザインで使用するには品質が不十分なとき、レタッチで解像度を上げるまではできないものの、ある程度の画質向上ができます。例えば、低解像度の写真は、ノイズが目立つことがあります。ノイズ除去ツールを使って、できる限りノイズを取り除きます。さらに解像度が低いと、写真がぼやけて見えることがあります。シャープネスを上げることで、ディテールを強調し、より鮮明な印象にできます。色味も劣化していることが多いです。レベル補正やカーブ補正を使って、コントラストや彩度を適切に調整します。

Hee のプロフィール画像

Hee

地方でWebディレクター。コンセプトメイキングや情報設計を含めて上流工程から制作業務に携わっています。コーポレートサイト、ECサイト、自治体サイト、ブランドサイト、グラフィックなど他ジャンルを経験。多いときには20案件をもつことも。デザインメンターでは複数のデザイナーに対するデザインディレクションの経験、ブランディング提案の経験から学んだことを発信しています。