デザインにおけるトンマナとは?←トンマナを定めるとは、キャラ作り!?

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「トンマナ的に違っているから合わせて」「この企業のトンマナってなに?」

デザインの現場にいると、トンマナという言葉、耳にする場面結構ありますよね。でもトンマナという言葉自体、ふわっと理解ししているレベルで、ちゃんと理解していない人が多いのではと思います。

今回はデザインに関わる人なら誰もが知っておかなければならない「トンマナ」の基礎知識について教えていきます。

トンマナーとは?

「トンマナ」とは、トーン(Tone)とマナー(Manor)を組み合わせた言葉であり、デザインの世界観を作り上げる上でのルールです。

もっと簡単に言うなら、デザインの方向性を決めて、一貫性したイメージを作る上げる共通ルールです。

ここでいうトーンはデザインの「調子・雰囲気」を指して、マナーはそれらを表現するための「方法」と考えてよいです。

要は配色やフォント、トーン(Tone)を整えて、マナー(Manor)化するわけです。

これら2つの要素を明確にルール化することで、制作物をつくるときに、トンマナに従ってつくれるため、デザインに一貫性を持たせることができます。

トンマナーを定めるとは、「らしさ」を人格化すること

ブランドには個性=「らしさ」があります。「らしさ」というと抽象的に聞こえるかもしれませんが、僕は「人格」のように捉えています。

実は僕たちが「ブランド」と認識しているものは、ほぼほぼトンマナが整っていて、かつ正しく伝達できているのです。

NIKEらしさ、味の素らしさ、Canonらしさ、ノース・フェイスらしさ・・・。

これらはひとめ見ただけで認識できると思いますが、各ブランドにおいてデザインがちゃんとブランドの人格を表現していて、消費者がそのブランドを識別するだけで、「あっあの企業だな」と結び付けられるようになっているわけです。

なぜトンマナが必要なのか、を考えてみる

ブランド像をつくれるから

トンマナで重要なのは、商品やサービスを届けたいターゲットに対して、正しくブランド像を作り上げること。

生活者は何度もブランドのイメージと接触することで、頭の中に「ブランド像」を作り上げていくわけですが、こちらが意図したブランドイメージをブレなく連想させられるかが重要だからです。

例えばコカ・コーラは、コークレッドとフォントをみれば「あっ、この赤い色のフォントロゴは”コカ・コーラ”だな」と、こちらが企業名を伝えなくても認識できます。

これは長い時間をかけてブランドに触れるあらゆるシーン(店頭で商品を手に取る消費者、Webサイトを見るユーザー、採用動画をみる求職者)でコカ・コーラが同じトンマナで繰り返し発信してきたからです。

もしある店頭では青色を使っていたり、秀英丸ゴシックを使っていたりするとトンマナがバラバラだとすると、ブランドの印象が不安定になり、ブランドのイメージがブレが生じます。

性格がバラバラにならないように

これは経験上ですが、企業は自社のブランドに対して、「どういうブランドとしての個性があるか?」とちゃんと理解しているケースが少ないです。

例えば配色ひとつとっても、「制服の色が青色だったの、青色がコーポレートカラーだと思っていました」というふうに、身近でよく目にする色から、自社のカラーを想像している人もいます。

そういった企業が、ホームページやチラシを作るときには、そのときの担当者が好むデザイン(色やフォント含め)に仕上がってしまい、実はデザインをつくればつくるほどトンマナがバラバラになっていくのです。

だからトンマナというルールをつくることで、好みやその場の勢いに左右されない一定の個性が示されたデザインをつくることができるのです。

無駄なデザインを作らなくても良い

デザイナー泣かせなのは、クライアントからのフィードバックのたびにコロコロと意見が変わることです。

それを防ぐためにもトンマナが必要で、最初の段階でちゃんとトンマナを握っておけば、プロジェクトに関わるメンバーが同じ共通認識をもっておけるので、例えば制作段階中に社長のような発信力のある人の鶴の一言、デザインの方向性が大きく変わることがありません。

これがないということは、無駄なデザインを考えなくてもよいので、工数的にも効率的にデザインができます。

デザイナーがトンナマで意識すること

ブランドをちゃんと理解し、合意形成をとること

トンマナを定めるとは、ブランドの個性=「らしさ」を、目に見える形で人格化すること。

要はデザイナーはブランドのキャラづくりを担っていきます。

その作業をする上で大切なのは、

  • どんなブランドであるか?
  • 今後ブランドで何を表現していきたいのか?

というブランドの根幹となる「世界観」や「未来像」を正しく認識し、クライアントに対してその合意形成をとっていく必要性です。

前者においてはデザイナーが間違った世界観や未来像をもっていては「このブランドは誰?」というように、全くブランドの実態とは異なるキャラを作り上げてしまいます。

後者ではクライアント内であれこれと意見がバラバラでまとまっていない状態だと、トンマナを定められませんし、定めたとして四方から意見が飛び出して、キャラが歪んでいきます。

だからこそデザイナーはトンマナを決める前段階で、ブランドを深堀するとともに理解を深めて、方向性や進むべき未来への合意形成をとっていくべきです。

「トンマナ」をコントロールするのが仕事

デザインの現場では、「トンマナ合わせて」とよく使われます。

これはプロジェクトにおいては、社内チームや社外など複数の人間が関わるケースが多く、誰かがコントロールしないとトンマナがバラバラになるからです。

デザイナーはつねに「トンマナ」を意識して、例えば新人のUIデザイナーにデザインをしてもらう場合でも、イメージと異なるテイストだったり、異なるフォントを使っていたりした場合、レビューをするべきです。

トンマナの要素

色には企業のイメージやメッセージを直感的に伝えることができます。そのため、トンマナの要素では配色の選択がとても重要。

例えば「未来へ躍進する」イメージを作り上げたいなら「シルバーとブルー」=シルバーは未来的なイメージを連想させ、ブルーは科学や技術のイメージだったり、近未来的にするのであればちょっとポップですがネオンカラーで配色してもいいかもしれません。

フォント

フォントは種類だけでなく、サイズ、太さまで定義して、ブランドに合うフォントを選ぶべきです。

例えば「可愛らしい」を表現したいのであれば、柔らかさや温かさを表現する手書き風のフォント、あるいは曲線が多く、円やループが多いフォントを選ぶ形です。

モチーフ・イラスト

モチーフは企業の象徴化、あるいはデザインにメリハリをつける、と要素として非常に重要な表現です。

画像

画像のレタッチの基準を決めるのもトンマナを定めるうえで重要。

デザインのトンマナを決めるプロセス

ここからは具体的にトンマナを決めるプロセスについて教えますね。

ヒアリング

トンマナを決める最初のステップとして、トンマナを定義するための情報収集です。

弊社の場合は、主に2つの方向性からヒアリングをします。

  • 商品・企業がもつ価値
  • 企業/ブランドの下支えとなっている経営者や開発者の原体験。

前者はつまり強みと言いかけることができます。この場合自社で言われている強みだけでなく、それを競合他社と比べたときにどうか?という視点ももってください。

後者はブランドの「個性」形成されることになった源流へとさかのぼっていく感じです。つまり社会における企業の存在意義を考えていく作業ですね。

キーワード化=キャラを言葉で表現しみて

最初のヒアリングであがった内容をキーワード化していきます。

ここで重要なのは「この企業って何っぽい?どんな人間としてユーザーにみせてあげるとよさそう?」と、人格化を目指して言葉を考えていくことです。

例えば「なにかユーザーに困ったことがあればすぐに駆けつけています」というような強みがヒアリング段階で出てきたなら「頼りになる」だけで終わらせずに「頼りになる」-「大工さんみたいな存在」あるいは「お医者さんみたいな存在」と人格をもうけてあげるだけでも想像がしやすくなると思います。

割とこの人格化をしてあげることで、頭のなかにブランドのイメージが明確にできあがってくることもあります。

キーワードから要素を考えていく

キーワード化ができたら、そのキーワードを思い浮かべられる配色やフォント、使用するモチーフ、写真のレタッチなどトンマナとなる要素を考えていきます。

トンマナの事例

トンマナ(トーン&マナー)の事例をいくつか紹介します。

Apple

Appleのトンマナはシンプルさ、ミニマリズム、革新性を強調しています。製品デザイン、広告、ウェブサイト、店舗まで、全てにおいてこの一貫したトンマナが見て取れます。クリーンな空間、シンプルな色使い、直感的なデザインがAppleブランドの特徴です。

IKEA

KEAのトンマナは機能性、アクセシビリティ、持続可能性を重視しています。明るい色使い、シンプルで実用的な製品デザイン、分かりやすい組立指示書などが、このトンマナを反映しています。

Nike

Nikeのトンマナは刺激的で動的、インスピレーショナルです。スポーツとパフォーマンスを重視した広告、勇気づけるスローガン(例: Just Do It)、スタイリッシュな製品デザインが、Nikeのアイデンティティを強化しています。

Hee のプロフィール画像

Hee

地方でWebディレクター。コンセプトメイキングや情報設計を含めて上流工程から制作業務に携わっています。コーポレートサイト、ECサイト、自治体サイト、ブランドサイト、グラフィックなど他ジャンルを経験。多いときには20案件をもつことも。デザインメンターでは複数のデザイナーに対するデザインディレクションの経験、ブランディング提案の経験から学んだことを発信しています。